ギターよもやま話 No.31

知っておきたいアンプ講座2
  前回、アンプの種類やセッティング&しくみなどを解説してみましたが、今回は具体的なセッティングのコツや実用的な使い方などを紹介してみたいと思います。合わせて『真空管』や『電源』などの“マメ知識”も紹介してみますので、音作り&アンプ選びの参考にして下さい。

◆具体的なセッティング例

  ここで紹介するのは、あくまで基本的なセッティング例です。使用しているギターがシングルコイルなのかハムバッキングなのか、アンプの種類やアンプの程度によって実際の“音”はかなり違ってくるので、ここで紹介するセッティングを参考に、自分の好みの“音”にアレンジしてみて下さい。クリーン・サウンドが得意なフェンダーやJC120などのアンプを『フェンダー系』、マーシャルやブギー、ヴォックスなどの歪みが得意なアンプを『マーシャル系』としてまとめましたので、参考にして下さい。

クリーン・サウンド
カッティングやアルペジオなど美しい『クリーン』サウンドはギター・サウンドの大きな魅力です。入力レベルを押さえて、音が歪まない音量でアンプをセッティングします。大きな音量のクリーン・サウンドを得たい場合は大型(ワット数の大きい)アンプが必要になります。
フェンダー系、マーシャル系
  Volume (GAIN)を上げずに音量をMaster(マスターボリューム)で調整する


クランチ・サウンド
アンプの増幅システムは「入力レベル」を上げていくと「出力レベル(音量)」も大きくなるしくみですが、ある一定の「出力レベル(音量)」に達すると、音量はそれ以上上がらず、入力レベルを大きくするにしたがって音が“歪み”だします。その歪みだした音を『クランチ』といいます。ピッキングのニュアンスもしっかりと残り、歯切れの良いサウンドはロックの基本サウンドと言えるでしょう。

フェンダー系
1ボリュームのアンプは「5」を超えると歪み出す
※ツインリヴァーブやJC-120などは
  シンプルなチャンネル(左側)の方が音が太い
マーシャル系
  マーシャルでは「PRE-AMP」と表記されることがある


リード&ヘビー・バッキング・サウンド
入力レベルを大幅に上げる事によって、いわゆる『オーバー・ドライブ』サウンドになります。簡単に言えばアンプの「ゲイン」や「ドライブ」を上げることで、深い歪みのヘビーなサウンドになります。サスティーンも増してギターソロに最適なサウンドを作ったり、ヘビー・ロックにマッチするような重低音でキレの良いサウンドを作るように心がけましょう!!くれぐれも「歪ませすぎて」音がグチャっとしてしまわないようにして下さい。
コードを弾いてみて、『各音がしっかり分離して聞こえるかどうか』確認していくと良いと思います。


フェンダー系
  ボリュームを「フル(10)」にしても十分な歪みが得られない時は、
  「ブースター」や「オーバードライブ」などのエフェクターを使用する。


マーシャル系 1.リードの場合 2.ドンシャリの場合
いわゆる「ドンシャリ」と呼ばれるハードロック&ヘビィロック向けのセッティング。
ギターソロ時などはエフェクターで「Middle」を足すとよい。

アッテネーター(音量カット)アッテネーター(音量カット)の使用
ギター・アンプは入力の大きさによって「歪み具合が変わってくるしくみ」になっているので、相当量の“音量”を出さないと、十分な『歪み』は得られません。でも、そのような「大きな音」を出せる環境はなかなかありません。それでもアンプでの『歪みサウンド』にこだわりたいという人はマーシャルの『パワー・ブレイク』などに代表される、“アッテネーター”の使用をお薦めします。『歪み』はそのままに音量を最大50%カット(小さく)できるので重宝です。



◆サウンド別のアンプの選び方

クリーン・サウンド重視なら「W(ワット)数」の大きなアンプ
クリーン・サウンドをメインに音作りをしたい場合は出力レベルに余裕のある、W(ワット)数の大きなアンプがよいでしょう。真空管アンプなどではパワー管の本数が多い方が(4本が一般的)、クリーン・サウンドに向いています。スピーカーも10インチ以上のものが複数使用されているものの方が、低音にゆとりがあって良いでしょう。
歪みサウンド重視なら「W(ワット)数」は中くらい
もちろん大会場での大音量を稼ぎたい場合などは、W(ワット)数の大きい大型アンプを使用することになりますが、ライブハウスなどの実用的な会場でアンプの持つ本来の歪みの「オイシイ部分」を使いたいなら30W〜50Wの2ヴォリュームのアンプがお薦めです。音量が上がり過ぎずに歪みを得るには、出力(音量)の限界があまり大きくない方が良いということです。真空管アンプならパワー管が2本くらいのアン プが最適だと思います。
レコーディングでの小型アンプの使用
出力の小さな小型アンプ(10W〜20W前後)は音量を上げずに十分「歪む」ので、レコーディングなどでリード(ソロ)を弾いたりするのに使用しても面白いと思います。エリック・クラプトンがレコーディングにフェンダー・チャンプを使用していたのは有名な話です。小型アンプ特有の『箱鳴り』魅力です。



◆ラインセレクターなどで2つのアンプを同時に鳴らそう

1つのアンプではどうしても理想のサウンドに近づけない、という人はキャラクターの違う2つのアンプを同時に鳴らして、
ステレオにすることで互いのアンプの欠点を補うという方法もあります。


片方のアンプにエフェクトをかけるセッティング

基本サウンドを出すアンプでしっかりと音の「芯」を確保できる
ため、エフェクターによる音ヤセを解消できる。
クリーン・アンプの歪みアンプの切り替え&ミックス
クリーンサウンドと歪みサウンドを曲によって切り替える時に
便利なセッティング。各アンプの長所を活かして音作りができる。


◆センド&リターンでのエフェクト・ループ

アンプの後ろのパネルなどに『センド』『リターン』というジャックがありますが、これは「プリアンプ後、パワーアンプ前」にエフェクトをかけるミキサーの『AUX』のような使用法ができます。接続方法は下の図を参考にして下さい。ラック式の空間系エフェクターを使用したい場合や、基本サウンドとして“かけっぱなし”にしておくエフェクターなどがある場合にお薦めです。
上手く『センド』『リターン』を活用することで、足元の曲中で「on&off」するエフェクターの数を減らせるメリットもあります。


「ON」&「OFF」するエフェクターは直列でつなぐアンプ背面




◆リンク(ループ)による音作り


フェンダー・ツインリヴァーブやローランドJC-120など2つのパワー・アンプを持つアンプや、オールド・マーシャルなどの4インプットのアンプ(4つのインプットを持つアンプ)では、通常ギターをつなぐインプットの他に余った3つのインプットの内、2つを“リンク”(シールドでつなぐ)することによって、また違った音色を作ることが出来ます。音を太くしたり、ショート・ディレイ効果を狙ったり、エフェクターを組み合わせたり色々実験してみましょう!!

チャンネル2をメインに使用

メインで使用する「ch2」のLow(2)を「ch2」のHigh(1)につなぐ

※ch1とch2のセッティングを変えて音作りをする。メインのchの方の「vol」を少し大きめにすること。

マーシャル系


メインの「I」にギターをインプット。
メインの
「II」から下段の「I」へループする。




◆真空管で音が変わる!?

  真空管には大きく分けて『プリ管』と『パワー管』があります。ガラス製のものやメタル製のものがありますが、「ロシア製」「中国製」「アメリカ製」「東欧(チェコ)」など生産国によっても音色は違ってきます。もし、興味があれば交換は簡単ですので色々試してみても面白いと思います。この他に『整流管』という真空管もありますが、整流回路には最近ではメンテナンス・フリーのダイオードが使われることが多いようでオールド・アンプなどでしか見かけません。
整流管(5U4、5Y3など)は現在では入手も難しいようですが、グルーブ・チューブから代用品が出ています。

ブリ管
プリ管

ギターから入力された信号を、パワー管が増幅できるレベルまで増幅したり、トーン(音色)を作ったりする役割があります。高さ5センチくらいの小さな真空管です。エフェクターなどに使用されているのはこの『プリ管』が多いようです。『12AX7』という9ピンの管がほとんどのギターアンプに使用されています。ヨーロッパでは『ECC83』と呼ばれますが全く同じものです。他にアメリカ製の改良型を『7025』と呼んだりします。


パワー管

パワー管プリ管で作られた音をスピーカーで再生できる大きな音量に増幅するための真空管です。『パワー管』が2本使用されているアンプの場合、マッチングされた2本組み(ペア)で購入して下さい。4本使用されているアンプなら、4本(カルテット)で購入して下さい。電流値の合っていない組み合わせで使用すると、アンプが壊れてしまうこともあるので、1本ずつ購入したりしないようにしましょう!!フェンダーアンプで有名な『6L6』管(クリーンな音)やマーシャルが使用している『EL34(6CA7)』管(ウォームな音)、最近の大型アンプに使用される『6550(KT88)』管、チャンプなどの小型アンプに使用される『6V6』管やギブソンの小型アンプに使用された『EL84(6BQ5)』管などがあります。交換時など、型番も間違えないようにしましょう。



真空管の交換時期

真空管は電流を流した時間によって序々に劣化してしまいます。電流を流した時間数で劣化していくものなので、何年たったから「そろそろ交換」ということはありません。寿命間近の真空管の方が“いい音”がするという場合もあるので、交換時期についてはなかなか判断しにくいものです。真空管の先端が変色してきたり、音に元気が無くなったり、前に出てこなくなったりしたら交換しましょう。


真空管の『真空度』
この真空管の『真空度』が高いほど寿命が長く、クリアで歪みにくい性質があります。『真空度』はアメリカ製→東欧製→ロシア製→中国製の順で“低く”なっていくようで、真空度は「10〜1」の表示で表されています。『真空度』が高いほど数字も大きいということです。簡単に言えば「7番」の管よりも「3番」の管の方が“歪む”ということです。『真空度』の高い高級品よりも、中国製の『真空度』が低い安価なものの方が自分の求めるサウンドに合っていることもあるので、自分なりに試して理想のサウンドを見つけて下さい。

参考・・・スピーカーと真空管のインピーダンス(電流値)も合わせると音質的にも良い結果が得られます。
スピーカーの交換時などに注意して下さい。



◆電流も音に影響する

真空管(チューブ)アンプの電源には3種類の電源が必要で、「真空管のヒーターを稼動させる電源(交流)」&「真空管のプレートにかける100V〜500Vの電流(直流)」&「パワー管を上手く稼動させるバイアス電源(−直流)です。この3つの電源は1つの『電源トランス』から供給されるしくみになっているので、アンプの音を決める要素として『電源トランス』も重要です。海外との電圧の違いを補正する「変圧器」や突入電流を押さえる機材などを導入することで、音圧や音のツヤが増したり、真空管への負担をやわらげるたりすることができます。


アンプについて色々解説してきましたが、ライブなどではアンプの音を『マイク』で拾って、PAでミックスするのが一般的です。
『マイク』を通すということは、実際にアンプの音が客席に届くわけではなく、『マイク』で拾った音が客席に聞こえているわけです。頻繁にライブをする人や、レコーディング時などの事を考えて、普段から『マイク』を含めたトータル的な音作りを心掛けてみるのも良いと思います。自分専用の『マイク』を携帯しているギタリストも多いですよ!!理想の音作りを目指して頑張って下さい。



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