ギターよもやま話 No.30

知っておきたいアンプ講座
  「エレキギターとアンプはセットで、ひとつの楽器」とよく言われますが、たくさんのツマミに圧倒されて、なんだか複雑に感じてしまう人も多いと思います。でも基本的なギターアンプの知識を覚えて、理想のサウンドをゲットしたいですよね!?今回は疑問だらけのアンプの使い方について、『使う』という視点を中心にシンプルに解説してみたいと思います。知っておくと便利なマメ知識や、セッティングのコツなど、すぐに役立つ『アンプの基本』を紹介してみます!!

◆どんな種類のアンプがあるの?

  どのような形式のアンプがあるのか代表的なアンプの例などを挙げてチェックしてみましょう。


小型コンボ小型コンボ

フェンダーの『チャンプ』に代表される小型アンプ。
ボリュームをフル・アップ(全開)にした時の「ブルージーで独特なサウンド」はファンも多いようです。主にギター・ソロなどのレコーディング用に所有しているギタリストも多い他、ブルース・ハープ用としてもよく使用されています。

コンボタイプ(ビルトイン・タイプ)
コンボ・タイプ(ビルトイン・タイプ)


ギターアンプのスタンダードな形式でフェンダーのツイン系やツイード系、ヴォックスのAC-30、ローランドのJC-120などに代表される。
『ヘッド・アンプとスピーカーが一体になったタイプ』オールインワンのアンプです。
一体型なので運搬もしやすく、実用的で使いやすいタイプだと思います。出力やメーカーなど多種多彩のモデルがラインナップされています。
セパレート・タイプ(アンプ・ヘッド スピーカー)

セパレート・タイプ


マーシャルやメサ・ブギー、ソルダーノなどハイパワー大型アンプに多く、『ヘッド・アンプとスピーカー(キャビネット)が別々に分かれたタイプ』のアンプです。ヘッドとスピーカーのメーカーを変えたり、3段積みにして音量を稼いだり、色々と拡張&工夫ができるタイプです。
見た目もカッコイイので一度は憧れた人も多いはずです。
ラック・タイプ
VHTなどに代表される「プリアンプ部(音色を作るアンプ)」と「パワーアンプ部(プリアンプの音を増幅するアンプ)」、それらを鳴らす「スピーカー部(キャビネット)」をそれぞれ別々に選んで組み合わせる、もっともサウンド・ヴァリエーション持たせられるタイプです。主にラックに組んで使うのでシステムが少々大掛かりになってしまうのが泣きどころかもしれません。プリアンプ パワーアンプ プリアンプとパワーアンプ一体型




◆真空管アンプとトランジスタ(ソリッド・ステート)・アンプの違い
  ギタリストやオーディオ・マニアなどに『真空管アンプ』はなぜここまで人気があるのでしょう?
『真空管アンプ』と『トランジスタ(ソリッド・ステート)・アンプ』の違いを簡単に表現すると、真空管アンプは『温かく柔らかい音』。それに対してトランジスタ・アンプは『硬くて冷たい音』などと言われます。その原因は真空管とトランジスタの電気信号の“歪み方”の特性によるものだと考えられます。真空管は限界を越えた入力信号にも多少持ちこたえられるため「なめらかに歪む」特性があるのに対して、トランジスタは限界を越えると「急激に歪んで」しまいます。そのため真空管アンプが「プリアンプの増幅過多」によるマイルドな歪みを作りますが、トランジスタ・アンプは「増幅過多」になると耳に痛い歪みになってしまうので、ダイオードなどの歪み用の回路などで歪みを作っています。

トランジスタと真空管の比較グラフ

トランジスタも悪いところばかりではなく、非常に長寿命(半永久的)で幅広い周波数をフラットに素直に再生してくれるという特徴も持っています。性能の低下もほとんど無いので常に安定したサウンドを得られます。また、ダイオード回路で歪みを作るので小さい音量でも十分に歪んだ音を作ることができます。これに対して、真空管はパーツとしても性能はトランジスタにはるかに劣ります。寿命も短く、多くの電力を必要として、不安定。表現できる周波数もトランンジスタよりも狭いようです。それでも真空管の方が音がいいと感じるのはギターにとって一番オイシイ周波数を耳に優しく歪ませてくれるからだと思います。人間の感覚というのは「数値」では計り知れないものですね・・・。

参考・・・基本的に『真空管アンプ』と呼ばれるのは、プリアンプ部とパワーアンプ部の両方に「真空管」を使用したアンプのことを指します(プリアンプ部は主に音色を作り、パワーアンプ部は音を増幅する)。最近ではプリ管のみに真空管を使用
した安価なアンプも多く出ているようですが、やはり本来の『真空管アンプ』のテイストとは違うようです。



◆各ツマミの名称&役割
たいていのアンプのツマミは左から順に『歪みを調整するツマミ』(ゲイン、ボリューム)→『アンプの音量を調整するツマミ』(マスター・ボリューム)→『音色(トーン)を調整するツマミ』(プレゼンス、トレブル、ミドル、ベース)→『音を飾る(エフェクト)空間系ツマミ』(リヴァーブ、トレモロ、コーラスなど)という順になっています。これを踏まえた上で、各ツマミの機能をチェックしていきましょう!! ※ボタンをマウスオンすると各ツマミの説明が表示されます。

参考・・・通常トーンコントロールはプリアンプ部で処理するものですが、マーシャルの『プレゼンス』などは例外的に、パワーアンプ部に付いているトーンコントロールです



◆複数チャンネルを持つタイプ
1台のアンプに2〜3個の別々のプリアンプを備えていて、それぞれを『チャンネル(ch)』として切り替えて使用できるタイプ。最近のセパレート・タイプのアンプに多く、1台でクリーン&バッキング&ソロのサウンドをフット・スイッチ瞬時に切り替えたり非常に使い勝手の良い方式です。フェンダー・ツイン系、ローランドJC-120などもプリアンプを2つ搭載していて、独立した音作りのできる2つの『チャンネル』を持っています。

ボリューム、ゲイン、マスター、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス、リヴァーブの複数チャンネルコントロール



◆1ボリューム・タイプ
1つのボリューム・ツマミで『ゲイン(歪み)』と『ボリューム(音量)』をひとまとめにしたタイプ。
大型ではオールド・マーシャル、小型ではフェンダー・チャンプなどがこのタイプを採用しています。
ボリュームを一定の音量以上に上げると、徐々に歪んでくるしくみです。
かなりの音量になるのでこのタイプのアンプ「W(ワット)数」の小さいアンプの方が使いやすいかもしれません。

ボリューム、トレブル、ミドル、ベース、プレゼンス、リヴァーブの複数チャンネルコントロール

参考・・・真空管アンプには「メイン・スイッチ」と「スタンバイ・スイッチ」がありますが、簡単に説明しますと
  「メイン・スイッチ」は電源スイッチで「スタンバイ・スイッチ」は電源を入れたまま音を出なくするためのスイッチです。

スタンバイスイッチは「スピーカー」と「パワーアンプ」をON&OFFするスイッチで
電源を「ON」にしたまま真空管を冷すまもなく音を出ないようにできる。
ジャックの抜き差しやチューニング時にはスタンバイのみOFFにする。

※電源を切る時は必ず先に「スタンバイ」をOFFにすること。




◆アンプの構造を知っておくことも大切

  プリアンプの役割
ギターアンプは「プリアンプ」と「パワーアンプ」で役割分担する構造になっています。
「プリアンプ」は主に、ギターからの信号をトーンコントロール(EQ)したり、リヴァーブなどのエフェクトをかけたり『音のキャラクターを決定する』役割を果たす部分です。
同時にギターの信号をパワーアンプが増幅に必要とするレベル(音量)まで引き上げる役割も持っています。エレキギターはもともとごく小さい出力しかないので、そのままの音をスピーカーで再生できるレベルまで増幅すると“ノイズ”などの影響が大きすぎてしまい、良い音を作れません。そこでプリアンプで音色を補正しながらレベルをある程度増幅する必要があるわけです。


パワーアンプの役割
「パワーアンプ」は簡単に言えば『プリアンプで作った音をそのままスピーカーで鳴らせるレベルまで増幅する』役割を持っています。よく50ワット(W)や100ワット(W)という表示がありますが、これはパワーアンプの能力を示すものです。基本的に、プリアンプの増幅量が大きすぎることでアンプは“歪む”ので、アンプに付いている2つのボリュームは「ボリューム=プリアンプの増幅量(歪みの深さ)」「マスター・ボリューム=パワーアンプの増幅量(音量)」によると考えて良いでしょう。「プリアンプ」と「パワーアンプ」を別々にラック形式にしたタイプもあります。

参考・・・アンプは『プリアンプの入力(増幅)が大きいと歪む仕組み』なので、アンプを歪むセッティングにしておいて、ギターのボリュームをしぼることでクリーン(クランチ)サウンドを作ることができます。ギターのボリュームを1〜3にして もクリーンにならないようなセッティングは『歪みすぎ』だと思っていいでしょう。ピッキング・ニュアンスも消えてしまい、ハウリングを起こす可能性も高くなるので“歪み過ぎ”には注意しましょう。


スピーカーの形式による違い
最終的に実際に“音”を再生するのはスピーカー部です。「スピーカー自体の大きさ(直径、インチ)」や「キャビネット(スピーカー・ボックス)の方式&材質」によってもサウンドは大きく違ってきます。

オープン・タイプ形状スピーカー オープン・タイプ
真空管の放熱のためキャビネットの後ろが空いているタイプ。コンボ・アンプに多い形で、ハーフ・オープン(半空き)のモデルもある。
抜けのよいサウンドになる。蛇足だがコンボ・タイプのスピーカーの振動がアンプの回路に影響してしまう弱点もある。

ハーフオープンタイプ形状スピーカー


クローズ・タイプのスピーカークローズ・タイプ
セパレートタイプに多い。キャビネットの鳴り(箱鳴り)も良く、音も太い。コンボ・アンプでもクローズ・タイプもある。キャビネットの中にグラスファイバーの綿をつめるなどして、振動がアンプの回路部に伝わる振動を軽減しているものもあります。

スピーカーの後ろが完全にふさがれている



スピーカーの数
コンボタイプ、セパレートタイプに多いスピーカーの数

参考・・・スピーカーのサイズは「インチ」で表されますが、一般的に大きな径のものは「低音」が得意で、小さな径のものは「高音」を得意とします。あまり小さなスピーカー単発では豊かな低音は望めません。少し余裕のあるスピーカーが良いと思います。

アンプの音を決める要素として『電源』も重要です。海外との電圧の違いを補正する「変圧器」や突入電流を押さえる機材などを導入することで、音圧や音のツヤが増したり、真空管への負担をやわらげるたりすることができます。



◆気になるセッティングのポイント

  インプットのHigh(1)とLow(2)
まず最初にギターとアンプを接続しなければなりませんが、「インプット」が2つあったりでいきなり困惑した経験がある人も多いと思います。ギターをつなぐ場合、一般的に『High(1)』の方のインプットにジャックを接続します。ギターの信号は非常に弱いので、名前の通りハイパワーの『High(1)』のインプットが最適とされています。アクティブ(プリアンプ内蔵)のギターや、アンプとギターの間に別の“プリアンプ”を接続して細かい音作りをしたい場合などは『Low(2)』インプットにジャックを接続します。

インプットのHighとLowインターフェースキーボードやプリアンプを通したギターなどはこちらに差す。
またはわざと「Low」インプットに差し込んでボリュームを上げると
また違ったサウンドを得られるので、試しにみてください。

セッティングはフラット(12時方向)から始める
ギターアンプのトーン・コントロール(EQ)は非常に調整幅が広く、オーディオのような『フラット』な位置が存在しないという特徴があります。通常オーディオなどは、何のトーンコントロールも効いていない『フラット』な状態から高域や低域を増減させてEQをかけるしくみになっています。これに対してギターアンプは『フラット』の位置が無いので、使うギターや環境に合わせて自分の耳を頼りに音を作っていくしくみになっています。『フルテン』というカッコイイ言葉をよく耳にしますが、昔のアンプはEQがほとんど効かなかったので、トーンをすべて“10”にしてしまうセッティングも一般的(特にオールド・マーシャル)でしたが、最近のアンプで安易に『フルテン』にすると耳障りな暴れた音になってしまうことが多いので注意しましょう。やはり“EQ”(プレゼンス、トレブル、ミドル、ベース)はすべてのツマミをフラット(12時方向)にしてから音作りをスタートするのが良いでしょう。その後、足りないと思われる音域を増やしたり(ブースト)、強すぎると思われる音域を減らしたり(カット)して好みの音色に近づけていって下さい。

欲しい音域をブーストしたり、 いらない音域を
カットしたりして、自分の耳を頼りに音作りしていく
  プレゼンスのみ0からスタートして超高音域を加えていく。

参考・・・ ボリューム(音量)が大きいほどEQの効きも良く、音量が小さいほどEQ効きも弱くなる傾向があるので、
その辺も頭に置きながらセッティングを研究してみて下さい。


ギターは中域と高域がミソ
音楽的なバランスという観点からも、ギターのオイシイ音域は主に『中域』とされています。
それに『高域』のキラキラ感が加わって、ギターらしい“いい音”になります。そのため、特に「中域(ミドル)のツマミ」で音色のキャラクターが劇変します。基本的に中域(ミドル)をしぼると“抜け”が良くなり(しぼりすぎると芯がなくなるので注意)、中域(ミドル)をブーストすると太くてサスティーンのある温かい音になります(アンプによっては高域も一緒に上がるので気をつけましょう)。クリーン〜クランチのカッティングなどは中域(ミドル)をしぼって“抜け”を良くする。
強烈に歪ませたハードな音は『ドンシャリ』といわれる「トレブル&ベース10、ミドル0」のセッティングにする。
ギター・ソロは中域(ミドル)を上げてマイルドでサスティーンのある音に仕上げる、などの傾向があります。
次回に具体的なセッティング例を上げて図解したいと思います。



セッティング時に気を付けるモニター(聞く)位置
ライブやレコーディングなどではスピーカーの前にマイクを立てて音を拾うため、普 段自分が聞いているアンプの音とかけ離れてしまってビックリしてしまった経験のある人も多いと思います。アンプの音は『真直ぐ前に飛ぶ性質』があるので、立ち位置や耳の高さ(座るか立つか)によって聞こえ方にかなりの違いが出てしまいます。ライブやレコーディングなどの場合は普段からスピーカーの前に顔(耳)を近づけて音作りをしたり、マイクを当てるポイントを研究したりしましょう。小さなライブハウスなどでは、アンプから出る音が直接客席に届いていることが多いので、客席からも自分のアンプの音を聞いてみたり、色々な要素を総合的に考えて“いい音”を作るように心がけましょう。リハーサルなどの場合は、アンプの真ん前に立ったりすると周りの人に自分のギターの音が全く聞こえなくなってしまったりします。アンプの向きや立ち位置で、他の人にはうるさいのに自分には全く聞こえなかったりしてしまうので、自分にも他のプレイヤーにも優しい『位置』を研究してみて下さい。
アンプを斜めに傾けたり、アンプの中心から少し離れて立ったり工夫してみましょう。

女性ギタリスト
自分の耳の高さに音が飛んでくるように
アンプを傾けて置く

アンプ
アンプの真ん中から少しそれて立ってみる

今回はギターアンプの仕組みと簡単な仕組みと、使い方について解説してみました。次回は実際のセッティングなど、もう少し踏み込んでアンプの使いこなし術について話してみたいと思います。お楽しみに〜。



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