ギターよもやま話 No.28

ギターの「材」による音の違い(エレキ編)
  ギターという楽器はいくつもの様々なパーツの組み合わせが“バランス”して、そのギターのキャラクターが出来て上がっています。なので、ボディの材やネックの形状だけで、ひと口に特徴や音色を決めつけるわけにはいかないのですが、各主要パーツの『材』や『形状』によっての基本的な音の特徴を知っておく事は、ギターを買ったり、改造したりする時に非常に役に立つはずです。今回は「ボディ」、「ネック」、「フィンガー・ボード(指板)」、「フレット&ナット」の4パーツについて簡単にわかりやすくまとめてみたいと思います。

◆ボディの形状について
  エレキギターのボディは大きく分けてフェンダーのギターなどに見られる“フラット・トップ”という表面が平らなものと、レスポールやポール・リード・スミスなどに見られる“アーチド・トップ”という中心から外側に向かって緩やかにカーブ(アーチ)をつけたものに分けられます。(セミアコやフルアコなどの中が空洞のギターは除く)この2つの形状の違いはボディへの弦振動の違いにつながるので、音色も変わるはずですが、どちらが良いということはなく、好みで選んでよいでしょう。
エレキギターのボディー形状 フラットトップ

  エレキギターのボディー形状 アーチトップ


◆ボディの材について
  ボディの形よりも、材の違いの方が大きくサウンドに影響します。各材の特徴を知ってギター選びの参考にして下さい!また、より個性的なサウンドを目指したり、それぞれの材の弱点を補いあってバランスをとるために2つの違った材を組み合わせる“ラミネイト”という手法をよく使われています。代表的な例が『レス・ポール』でメイプルをトップ(表)材に用いてマホガニーをバック(裏)材に用いる手法で、メイプルのタイトな特性とマホガニーの暖かみのある特性が上手くバランスされています。この他、ボディの厚みやパーツを埋め込む穴(キャビティ)の開け具合によってもサウンドは変化します。
アッシュ材アッシュ材
日本では“セン”と呼ばれる材で、クリアーな中高域と音ヌケの良さが特徴です。
カナダ産、北アメリカ産が中心で、初期のフェンダー('56頃まで!?)によく使用されていますが、70年代あたりからは非常に重いものが多い。
初期の軽いアッシュは“ライト・アッシュ”と呼ばれています。

アルダー材アルダー材
現在でもストラトに多く使われている材で、重量は軽く、
中域に特徴がありバランスの良いサウンド。
よく言う「枯れた音」という印象。

マホガニー材マホガニー材
レスポールのバック材、SG、ファイアー・バード・・・などに多く使用されているとても軽い材。アコギのサイドやバックにも使用されていますが、ファットで中低域に特徴があります。アタックはあまり歯切れよくないので、ハムバッキングPUとの相性が良い。

メイプル材メイプル材
クリアーでアタックの強い、輪郭のハッキリしたサウンドです。
ただ、かなりの重量があるのでボディ全部がメイプルというものは少なく、ボディ・トップ(表)のみに使用される事が多いようです。
木目の美しいもの(トラ目、キルト、バーズ・アイなどの模様)はマニアもいるほど、高額で取り引きされることも多いようです。

ウォルナット材ウォルナット材
アタック感が強く、高域がストレートに出る印象。
かなりの硬さがあるのでネックに使用されることも多いようです。
この材も非常に重いのが弱点です。
キレイな木目と茶色の美しさは魅力的。

バスウッド材バスウッド材
少し前からよく使用されている材ですが、特徴はアルダー材に似て
高域〜低域までバランスの良いサウンドです。
“軽い”アルダー材という印象。

ローズウッド材ローズウッド材
“オール・ローズ”のテレキャスターで有名ですが、特徴はマホガニーをちょっと硬くしてウェットなサウンドです。重量も結構あるのでエレキギターにはあまり使用されませんが、アコギのサイド&バック材としては有名。



◆ネックの材質について
  ネック材としては『メイプル』と『マホガニー』が一般的ですが、ボディ同様2つの材を3枚で張り合わせて(ラミネイト)して強度を上げたものなどもあります。またアルミ製のネックや強化ファイバー製のネック、カーボン・グラファイトのネックなどもあります。これらは木製のネックに比べて優れた強度を持っていたり、ひと味違うサウンド・キャラクターを持っていたりしますが、一般的には木製のネックが主流なようです。
メイプル材メイプル材
非常に硬い材なので狂いも少なく、クリアーでタイトなサウンド。
フェンダー系はほとんどがメイプル・ネック。

マホガニー材マホガニー材
メイプルに比べてソフトで温かいサウンドが特徴。
レスポールやセミアコ、アコギなどはほとんどがマホガニー材。


◆ネックの形状について
  弾きやすいネックを選ぶことは、上手くなるために非常に大切です。ギターを弾く中で一番演奏に影響するのがネックのグリップでしょう。ネックは大きく分けて“U字型のシェイプ”と“V字型のシェイプ”の2種類を基本としています。それをベースに「幅」や「厚み」にバリエーションを持たせたものが作られています。テクニカルなプレイを好む人には薄くて幅の広いネックが人気のようです。ネックの厚みは『音の太さ』に比例していることが多い。
この他、ネックの塗装も演奏性に大きく影響するので「塗装の厚いもの」と「オイル・フィニッシュなどの木の手触りを残したもの」のどちらを選ぶかも、実際弾いてみて自分のフィーリングに合うものを選びましょう。

U字型シェイプ系 V字型シェイプ系(三角ネック)
U字型シェイプ系ネック断面図

70年代ストラト
40年代ギブソン・アコギ
などに多い

ギブソン系

Ibanezなどに多い
薄く幅広いネック
V字型シェイプ系(三角ネック)ネック断面図

50年代フェンダー
などに多い

古いアコギなどに多い極端なVシェイプ



◆ネックのジョイント方式について
  ネックとボディのジョイント方式も3種類あって、それぞれのメリットやデメリット、サウンドの違いがあります。
簡単に紹介してみます。

デタッチャブル(ボルト・オン)方式デタッチャブル(ボルト・オン)方式
ネックとボディを“ネジ”で止める方式。
安定性から考えても「4点止め」が良い。
サステインはあまり無いというサウンド的な弱点はありますが、簡単にネックを取り外せるので、修理や交換がやりやすいのが特徴。

セット・ネック方式セット・ネック方式
ネックとボディに凹凸を作って、しっかりと噛ませて接着したアコギなどでも主流の方式。
サステインもしっかりあってサウンドは良いが、修理などはリペショップに頼むしかないでしょう。

スルーネック方式スルーネック方式
ネックがボディの1番下まで伸びて、1本の木で出来ている構造。
その両側をボディではさむ作りになるので、反りや修理などはかなり難しい。
サステインは3種類のうち最もある。構造上、ハイポジションも弾きやすいデザインのギターガ多い。



◆フィンガー・ボード(指板)の材について
  「メイプル」、「ローズ・ウッド」、「エボニー」が主流。「メイプル」には指板まで1本の木で出来ている“ワンピース・ネック”とローズウッドなどのものと同じように指板を貼り合わせた“貼りメイプル・ネック”があります。
’59年〜’62年のストラトなどに見られる、“平ら”なネックにアール(丸み)のある指板を貼った指板を『スラブ・ボード』といいます。

メイプル指板メイプル指板
やはり硬い材なので、シャープでクリアなサウンドです。通常はネックと同じようにしっかり塗装されたものや、オイル・フィニッシュで薄く塗装されたものが主流。フレット交換時には塗装もやり直さなければならないので、ローズ・ウッドやエボニー指板と比べると5千円〜1万円ほど割高になる。

ローズ・ウッド指板ローズ・ウッド指板
メイプルに比べて“甘くてソフトな”イメージ。
アタック感は弱い分温かみがある。
基本的に無塗装。

エボニー指板エボニー指板
ローズ・ウッドより少し硬い分シャープで、“メイプルとローズ・ウッドの中間的サウンド”と言えます。
高級ギターに多く使われている指板です。
基本的に無塗装。


◆フィンガー・ボードの形状について
  指板(フィンガー・ボード)には緩やかなアール(カーブ、丸み)が付いているものですが、
これも弾き心地に大きく影響するので、少し触れておきましょう。

フェンダー・タイプ断面図フェンダー・タイプ(アールきつめ)
240Rくらいの目で見てわかるくらいの大きなアールのついたタイプ。
1&2弦の15フレットあたりを“1音チョーキング”してみて「音が詰まる」ところが一番低い弦高になるので、買う時に必ずチェックしよう。
構造上あまり弦高は下げられない。

ギブソン・タイプ断面図ギブソン・タイプ(アール少し)
350Rくらいの緩やかなアールのついたタイプ。
ギブソンのギターをはじめ、多くのギターがこのタイプ。
弦高も低くできるし弾きやすい。

クラシックギター・タイプ断面図クラシックギター・タイプ(ほとんどフラット)
400R〜フラットなアールの無いタイプ。弦高を極限まで下げられるので、
テクニカルなプレイを好む人はこのタイプが良いと思います。

スキャロップド指板スキャロップド指板
フレットとフレットの間をエグったような加工をした指板。
リッチー・ブラックモアやイングウェイ・マルムスティーンで有名な指板。チョーキングがスムースで押弦の力がほとんどいらないので、無駄な力がいらないのでテクニカル派向き。
ただ、力が入りすぎると音程が上がってしまう。



◆フレットについて
  フレットの形状や材質もサウンドに大きく影響するので紹介しておきます。
材質については硬いもの程『音も硬く』、柔らかい材質のもの程『音もソフト』な印象です。柔らかいとチョーキングやヴィブラートを多用する人などは、すぐに擦れてしまい“フレット交換”のサイクルが早くなってコストがかかるかもしれませんので、自分のスタイルに合った材質を選んで下さい。
また、“フレットの高さ”も重要で低いと『スライドやグリスに有利』という特徴があり、高いと『チョーキングに有利』という特徴があります。高いフレットでは力を入れすぎると「音程が上がってしまう」ので注意しましょう。

細めのフレット形状(フェンダー・タイプ)
立ち上がりが早く、シャープで歯切れよいサウンド。

太めのフレット形状(ギブソン・タイプ)
音程が安定しているが、アタック感は弱くなる。

極太のフレット形状(ジャンボ・フレット)
アタックもはっきりして、サステインも良い。
細フレット 太フレット ジャンボフレット(極太)


◆ナットについて
弦が直接乗る『ナット』も音質を決める重要なアイテムです。それぞれの特徴をまとめてみます。
牛骨製ナット
牛骨製ナット
コシのある自然な響きが得られるので「標準的」素材になっている。
ブラス(真鍮)製ナット
ブラス(真鍮)製ナット
ソリッドなサウンドで、かなりのサステインがある。錆には注意。
グラファイト製ナット グラファイト製ナット
耐久性がよく、サステインも良い。
摩擦が少なく滑りが良いのでアーミングに向いている。
練りもの製ナット 練りもの製ナット
牛骨の代わりの素材として最近よく使用されている。
サウンドは牛骨に近いが、柔らかいので耐久性に欠ける。

プラスチティック製ナット

プラスチティック製ナット
安価なギターに多い。サウンドはクセが無く、軽め。
ロック・ナット ロック・ナット
フロイド・ローズ・トレモロなどのギターに使用されるタイプ。
完全にロックしてしまうのでチューニングの微調整はトレモロ側で行なう。金属製。
ローラー・ナット ローラー・ナット
ナットと弦の摩擦を極限まで減らすことを目的に開発されたナット。
アーミング派は注目のナット。ジェフ・ベックで有名。
ベアリングを使用したナットもある。


ピック・アップやボリューム・ポッド、コンデンサーなどの電気系の話は
また後ほど特集してみますのでお楽しみに!!


No.29へ  ギターにハマる!INDEX  ギター検索
★日本で最大級のギター登録本数と加盟楽器店★
ギター検索はJ-Guitar.comの楽器サーチで

新品・中古ギター(アコギ / エレキ / クラシックギター)、エレアコ / ベース / ウクレレ等の新品・中古楽器の他、アンプ / エフェクター / 周辺機器 / パーツ・アクセサリ / レコーディング機器も検索できます。
Copyright:(C) J-Guitar.com All Rights Reserved.