高田二郎が斬る!

ワゥ・ペダルを斬る!


今回はとても奥の深いエフェクター、『ワゥ・ペダル』 に迫ります。



高田

今回は 『ワゥ・ワゥ・ペダル』 いきましょう!

いいですね〜。大好きです。
高田

ここ10年くらいかな〜。『ワゥ・ギター』 がまたハヤリ出したのは。

最近はHIPHOPでも何でも入ってますからね〜。
高田

ちょうど音楽的に “打ち込み” が流行りだした20年ぐらい前なんかには、『ワゥ・ワゥ』 はしばらく姿を消したんだよね〜。
僕もその頃(30歳くらい) “ダーリン” ってバンドでデビューしてアルバム2枚とシングル何枚か作ったけど、『ワゥ・ペダル』 の存在さえ忘れてたからね〜(笑)。

ステレオ・コーラス

確かにあの頃の曲に 『ワゥ』 の音って無かったかも・・・。その当時のギター・アレンジの選択肢に 『ワゥ』 は無くなってたって事ですか!?


高田

そうそう、忘れてた!(笑)でもやっぱりギターを始めた頃は 「レッド・ツェッペリン」 のファンだったこともあって、よく使ってたよ。ジミー・ペイジは “トーマス・オルガン” ってとこの 『Cry Baby』 っていうワゥ・ペダルを使ってたんだけど、僕も同じのが欲しくて買ったんだ〜。

好きなギタリストと同じ音を出したいですからね。

高田

でも今はどっかいっちゃったみたい・・・。記憶にないんだよね〜(笑)

現在、市販で手に入りやすいジム・ダンロップ社の 『Cry Baby』 とは違うんですね?
高田

うん。デザインも音も違うね。
で、『ワゥ』 をまた使うようになったのは、「ドリ・カム」 の仕事をするようになってからかな。「ドリ・カム」 がキッカケでハヤったかどうかはわからないけど、10年くらい前から 『ワゥ』 がまた普及しだしてき感じがするな。

やっぱり 『ワゥ』 の音ってカッコイイですからね!
高田

「ドリ・カム」 で最初に 『ワゥ』 を使うって事になった時も、「何でもいいや」 って感じで楽器屋に行ってジム・ダンロップ社の 『Cry Baby』 を買ったかな。
そのモデルには [アクティブ] と [パッシブ] の切り替えスイッチが付いてたんだ〜。珍しいよね。

それは初めて聞きました。Q (トーン・カーブ) を変えられるモデルや 「ドライブ」 が付いているもの、「ボリューム・ペダル」 と切り替えられるモデルなんかはよくありますけどね。
高田 それはインプット・ゲインが付いてたんだよ。その 『ワゥ』 から今使ってる 『ワゥ』 (VOX) まで5〜6台買ってるかな。
エッ!?そんなに買い替えたんですか?

高田

なぜかっていうと 『ワゥ・ペダル』 は消耗品なんだよね。そもそも 『ワゥ』 は “ペダル・エフェクター” でしょ?ペダルに連動してるギアで受け箱の中の “トーン・ポッド” を動かしてる構造になってるわけ。あと電池も必要だね。

ギターの “トーン” のつまみをペダルで動かしてるってわけですね?
高田

そう。“トーン・コントロール” を足でやるって感じだね。だから “トーン・ポッド” がだんだんすり減ってきて、ギターの実音よりカシカシっていうノイズの方が大きくなってきちゃうのよ。
“トーン・ポッド” が交換すると5千円くらいしちゃうから、新品で2万円以下くらいで買えるなら、新しい方が気持ちいいしって感じで買い替えちゃう。

どれくらいの周期で消耗しちゃうものなんですか?
高田

う〜ん、例えば30本くらいのツアーでリハーサルから使って、1ステージ20曲くらいのうち、2〜3曲で使ったらもう終わり〜って感じかな。(笑)

そんなもんでダメになっちゃうんですか?

高田

そう、だから必ず予備を持ってるようにしてる。
この 『ワゥ』 は予備を買いに行った時に限定モデルとして売ってたやつで、ボディがゴールドの 「VOX」 でカッコイイじゃんって感じで思わず買ってしまいました。中身はぜんぜん一緒みたいだけど・・・。

カッコイイですよ、それ!

高田

いろんなメーカーの 『ワゥ』 を試したけど 「VOX社」 製のやつが一番オーソドックスでクセも無くて、使いやすいかな。ハデでもないしね。

僕も持ってますけどハイ (高域) が出過ぎなくてナチュラルでマイルドな印象です。
高田

オールマイティに使える音かもね。「ジム・ダンロップ社」 製の 「Cry Baby」 はかなりハイよりのセッティングになってるからロックには向いてるかも。

ただ 「VOX」 の 『ワゥ』 って通すだけでハイが少し落ちてエフェクトをかけてないのにマイルドになってしまう気がするんですが・・・。
高田

そうかもね。
でも僕の場合はラックのシステムの中の “センド&リターン” を使うから 『ワゥ』 を使わない時は 『ワゥ』 をパスできるからダイレクトな音には影響ないんだけど、コントロール・ボードのスイッチと 『ワゥ』 のスイッチの両方に足をかけなきゃいけないからちょっと手間がかかっちゃうね。

 

『ワゥ』 はかけたい時と切りたい時にに強く踏み込んでペダルの先端ででスイッチをを押す仕組みになってるんだけど、『ワゥ』 を使った演奏中にあまりにテンションがあがり過ぎると、つい踏み込みすぎてスイッチをOFFにしちゃう事があるのがたまにきずかな。(笑)

僕も経験あります・・・。それじゃあこの辺で実際の使い方について教えてください!

高田

はい。『ワゥ』 っていうのはおもしろい “楽器” で、「ドリ・カム」 で最初に使った時なんか、曲の最初から終わりまで実音が無いんだよ。要するに、ポップス・ビートの基本的なアフター・ビート (2拍めと4拍め) のアクセントに対して 『ワゥ』 を “パーカッション的” に入れるっていう使い方で、ほんと最後までそれだけ!(笑)

『ワゥ』 を使うことで、ギターが一種の “パーカッション” になっちゃうわけですね!
高田

そう。左手はコードとか押さえずに弦に触れて置くだけ (ブラッシング) で、こんな感じで弾くの。 〜試奏〜
“ワン→チャカポコ→スリー→チャカポコ” って感じ。つまり1&3拍めは弾かずにリズムをとって、2&4拍めで16ビートのストロークをするんだけど、“チャカ” の部分で 『ワゥ』 を踏んで“ポコ”の部分で戻すっていう弾き方なわけ。
これならコード押さえられない人でも右手さえ練習すればバンドに参加できちゃうよね。(笑)

素晴らしい。(笑)でもすごく効果的にグルーブ感を演出できますよね!
高田

カッコイイよね。“アクセント” (強調したい部分) で 『ワゥ』 を踏み込むっていうのが、『ワゥ』 の使い方の基本なんだけど、踏み方の基本を紹介しておくね。
まずはテンポに対して “ワン→ツー→スリー→フォー” っていうビートがあったら、これを “1・と→2・と→3・と→4・と” オモテ拍とウラ拍に分けて考えて、「1で 『ワゥ』 を踏んで・とで戻す」って感じでオモテ拍で 『ワゥ』 踏んで、ウラ拍で 『ワゥ』 をもどすわけ。

1拍ずつ踏むわけですね。
高田

1拍で1往復させるって感じだね。ちゃんとウラ拍で戻すのがポイントです。これができれば16ビートのバッキングとかパーカッション的なブラッシングでの遊びなんかにはだいたい合うよ。
これとさっきのアフター・ビート (2&4拍) のみ踏むっていうのが基本的な 『ワゥ』 の使い方かな。
あとはその都度、リフやソロの強調したい部分 (アクセント) でファジーに踏むって感じ。

慣れないと難しそうですね〜。
高田

弦楽器としてはおもしろい使い方だよね。足でもリズムを演奏してるわけだしね!
ところで、どっちの足で 『ワゥ』 を踏む?

僕は右足ですね〜。左足は言うこと聞いてくれないから・・・・。
高田

(笑)僕は左足。右足で踏むとギターが動いちゃうからね。

そうなんですよ〜。座って弾くと右足ってギター乗せてるから動いてしまって困ります。
高田

左足はフリーだからね。僕はもうすっかり左足で踏むのに慣れちゃって、普段リズムとるのも左足だよ。練習してしたんだ〜。

素晴らしい!僕なんかギターが動いちゃうから『ワゥ』を使う時はレコーディングでも立って弾いてます・・・(笑)

高田

(笑)じゃあ次はコードを弾きながら、弾いた音の “トーン” を可変させていく例をやってみるね。 『ワゥ』 を踏むことで 「こもった音」 から 「開いたトーン」 に変えていくのがポイントなんだけど “赤ちゃんの泣き声” みたいなイメージだよね。『Cry Baby』 とはよく言ったもんだよね!素晴らしいネーミングだよね。

「オンギャー」 まさにドンピシャですね!
高田

で、好きだったジミー・ペイジの次にこんな 『ワゥ』 の使い方もあるんだ〜って思ったのがリー・リトナー。リー・リトナーの1枚めのソロ・アルバム (「ファースト・コースト」) では、入ってる曲のほとんどで 『ワゥ』 を使ってるんだよね。

すごいですね〜。どんな使い方をしてたんですか?
高田

例えばおもしろかったのは、『ワゥ』 の後にディレイを長め (500〜1000ms) にかけて、1&2弦のなるべく高い音 (20フレット以上) を適当に押さえて、『ワゥ』 をゆっくり開くのに合わせて、細かめにピッキングしながら音 (フレット) を下げていくっていう弾き方。〜試奏〜
これにディレイがかかるとかなりいい感じになるんだよ。

ソウル系にも合いそうなクールな感じですね〜。
高田 もうギターというより効果音だよね。スペース的な。これは結構シビレたね! あとは半拍3連でブラッシングでやる “チャカチャ・ポーン” っていう、パーカッション的な効果音もカッコよかったな。 〜試奏〜(笑)
コードにとらわれないで、いろんな効果がだせるんですね〜。『ワゥ』 って素晴らしい!

高田

あと効果音とは違う使い方でおもしろかったのは、『ワゥ』 で有名なワゥ・ワゥ・ワトソン。
ちょっと前にまだやってたんだ〜って思ったんだけど(笑)、セデスのコマーシャル・ソングになってたヴァネッサ・ウイリアムスの曲の中でカッコイイことやってるのがあって、やっぱりワゥ・ワゥ・ワトソンは違うな〜って感心したね

やっぱり名前にしちゃってるくらいですから・・・(笑)
高田

アクセントの位置がさっきの4分で踏むのとかとは違ってウラ拍で踏むの。それもコード (実音) はオモテ拍でこもらせておいて、ウラ拍で踏んでブラッシング音を強調するって感じの使い方。 〜試奏〜

カッコイイですね〜。
高田

コード (実音) をこもらせて、ブラッシング音の時に 『ワゥ』 を開いて強調するなんて発想がぜんぜん違うよね。さすがです。
あとさっき紹介した半拍3連のパターンなんかもすごく勢いがあってカッコイイんだよ。

僕はハービー・ハンコックのアルバムに参加してるのを聞いて、ワゥ・ワゥ・ワトソンの大ファンになったんですけど、今度ヴァネッサのも聞いてみます。

高田

あとはアイディア的には普通なんだけど、ソロで使うのもよくあるよね。このソロで使う場合のアイディアなんだけど、“ワゥワゥ” させないで、ソロの展開に合わせて少しずつ “トーン” を変化させるやり方もおもしろいよ!

『ワゥ』 をブースターとして使うわけですね。
高田

そう!“トーン・ブースター” 的な使い方だね。中域をブーストしたり、高域をブーストしたりしてソロに合わせて 『ワゥ』 を止めながら使うわけ。

キンキンの音だったりモコモコの音だったり、おもしろいですね。
高田

僕が 『ワゥ』 でおもしろいと思うのは、実音で弾かないところの音も、すごくギターのサウンドになってるところだね。今はR&Bがハヤってるけど、いわゆる16ビートに対して実音を弾いてないところのアクセントもひとつの 『ワゥ』 の醍醐味になってるよね。

最近はほんといろんな曲で 『ワゥ』 の音を耳にしますね。

高田

そうそう、たまに専門学校で音響に携わろうとしている“卵”達を対象に 「楽器論」 っていう特別授業をすることがあるのね。
自分の持ってるエフェクターとか楽器の特性について色々解説するんだけど、今は何でもデジタル化してきてるから、サウンドでは聞いたことがあっても実際にそれがどういう物なのか知らない人が結構多いのね。
『ワゥ・ワゥ・ペダル』 ももちろん紹介するんだけど弾いて見せると、かなりビックリするというか、興味をもってくれるね。

確かにギターを弾いたこともない人からしたら、まさか足でエフェクターをコントロールしてるなんて思わないですよね。
高田

そうだよね〜(笑)。あと 『ワゥ』 っていうところで 『オート・ワゥ』 ってのがあるね。MXRでいうところの “エンベローブ・フィルター” だね。
あれはこういう 「ペダル物」 とは違う独特のかかり方しておもしろいね。ちょっとシンセっぽさを思わせるけど使い方によっては効果的かな。

ベーシストがチョッパーしながら過激にかけてるとカッコイイって思っちゃいます。
高田

すごいといえば、フィルアップ・チャーチっていうジョージ・ベンソンのバックでギター弾いたりしてたギタリストが 『ワゥ』 を使ってるのを見たんだけど、高椅子に座って両足でペダルを操作してたのはビックリしたね〜(笑)。

スゴすぎます。

高田

『ワゥ』 ともう片方はヴォリューム・ペダルだと思うんだけどね。そうそう今思い出したんだけど、今度 BOSSからモデリング・ワゥが出るらしいんだけど、すごいのが赤外線でトーン・カーブをコントロールするらしいよ。遊びもまったく無いみたい。

トーン・ポッドが無いんですね!?
高田

しかも過去の名機の特性をいくつもモデリングしてるらしいし、レンジの幅も調整できるらしいよ。かなり興味深いね。しかも1万5〜6千くらいらしいんだけど、安いよね〜。

ホントですか?今日帰りに買って帰ります。(笑)
高田

あんまりそういうのが良くなっちゃったら、こういうアナログの 『ワゥ』 の居場所なくなっちゃうよね。
宅録なんかだったらかなり使い勝手がいいだろうね。

便利だけど、困りましたね〜。(笑)
高田

でもこういうアナログの物はデザインいいし、愛着わくよね。やっぱり本物を知ってからモデリング物を使った方がイメージわくしね。

高田さんは 『ワゥ』 を歪みの前と後ろのどちらにつなぎますか?
高田

ウ〜ン、僕は前だね。

前の方がやっぱりマイルドになる気がするのですが・・・。
高田 そうだね、そういう傾向にあるかもね。歪みの後だとかかり方もエグイけど、ノイズも増幅しちゃいそうだしね。

ではこの辺でまとめをお願いします。
高田

『ワゥ』 を使うことはギターで音楽を奏でる時にかなりいいトレーニングになると思うので、ぜひ使ってみてください。
4分で踏むにしてもリズムにきちんとノッてないとできないし、ブラッシングで2&4拍のアクセントを強調する場合なんかも、音にバラつきがあったらいけないわけだから右手のストロークをきちんと揃えないといけないし、かなり勉強になると思います。
右手のストロークは早く振りおろせば弦をピックが一瞬に通り過ぎて “点” になるけど、ゆっくりストロークして一拍の長さを十分に利用して表現することもできるよね。
『ワゥ』 はこれがやりやすい!この2つのストロークを使い分けることができると、拍数に対して自由にアプローチできるようになるし、考え方も変わってくるよね。

奥深いですね。勉強になります。
高田

長くなっちゃったけど、『ワゥ』 を使うってことは “足でリズムをとる” 動きと、“右手のピッキング” の動きのコンビネーションのトレーニングにもなるので、ぜひ1つは買って使ってみてください!

ありがとうございました。


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