高田二郎が斬る!

SCH-Zを斬る!


前回に続き“B級”&“チープ”シリーズ第2弾!ARIONのステレオ・コーラス『SCH-Z』について語っていただきました。



ステレオ・コーラス
高田

は〜い、今回も “B級” & “チープ” シリーズ第2弾!ARIONのステレオ・コーラス 『SCH-Z』 です。エフェクターの裏を見てみると上野開発センターって書いてあるね。

「ARION」=上野開発センターってことですね。
高田

さらに “Designed In JAPAN” 、 “Made In スリランカ” って書いてあるから日本(上野開発センター)で設計&開発されてスリランカで製造されてるんだろうけど、あまり知られてないよね。

はい、僕も知りませんでした。
高田

俺も上野開発センターさんには失礼ですけど、最初 「何これ?」 沖縄のビールみたいって思っちゃったもん。

それは 「ORION」 ですよ〜!

高田 (笑)デザインにしてもちょっとヤボったいでしょ?プラスッチックっぽいボディでなんかチープだよね。
ちょっと古いデザインっぽいですよね。

高田

あと、このツマミの下のパネルがこれはグレーだけど最初は黒だったらしいからこれは第2期目のモデルみたいだね。

中身は変わらないんですか?

高田

たぶん。 『ステレオ・コーラス』 ってことに変わりはないけどね。このエフェクター、聞いてビックリなんだけど値段がですね、定価4,800円!!安い楽器屋さんなら3,800円くらいで買えちゃうのだ!!

エ〜!?それって安すぎませんか〜?
高田

ちなみにこれは渋谷の某楽器店で買ったんだけど3,800円でした・・・(笑)。3,800円ですよ〜!ちょっと信じられない値段だよね。うっそ〜って思ったけど他から、このエフェクターの評判を聞いてて買ってみました。

じゃあ音はいいってことですか?
高田

これがなかなかいいんだよね。いろいろ試してみる前に 『コーラス』 の歴史について簡単に触れてみようかな。

お願いします。

高田

最初はなんといってもBOSSの 『コーラス・アンサンブル』 だね。

『CE-1』 でしたっけ?
高田

そうそう、あのグレーのでかいやつ。あれがでる前はアルペジオなんかに広がりをもたせるのに、よく 『フランジャー』 とか 『フェイザー』 とかを使ってたね。
『コーラス』 っていうのはやっぱりBOSSの 『コーラス・アンサンブル』 が最初かな。なんといっても “ステレオ” だったしね!
ギターは本来 “モノ” な楽器でしょ?だからこの “ステレオ” ってのは衝撃的だったね!このBOSSの 『CE-1』 からエフェクターの “ステレオ革命” がおこったって感じ。
『CE-1』 はコーラスのかかりが上品でデリケートな印象があるな。インプットのゲインのツマミを上げ過ぎるとすぐ歪んじゃうのね。

今では名機とされてますよね?
高田

うん。なかなか手に入りにくいかもね。
で “ステレオ” についてだけど、“ステレオ” っていうのは本来、「右」 と 「左」 の音が違うってことだよね。BOSSの 『コーラス・アンサンブル』 の “ステレオ” は片方が 「エフェクト音」 のみで、もう片方が 「ドライ(エフェクトのかかってないダイレクト音)」 っていう構成になってるのね。
これを2台のアンプにつないで真ん中に立って弾くと包みこまれるようなすごい、いい音になるんだ〜。

体験してみたいですね〜。


高田

『CE-1』 はアナログだけど、その後デジタル技術が発達してきて 『デジタル・ディレイ』 の発展形みたいな 『コーラス』 がでてくるんだけど・・・

どんな感じですか?
高田

例えばTCの 「デジタル・ディレイ」 なんかで20m〜30mくらいのショート・ディレイをかけて、リピート・タイムを “0” にして、それにモジュレーション機能をかけてあげると 『コーラス』 になるって感じ。
この手のデジタルものは聞いた時の「コーラス」のタイム感が遅れてくるんだよね。全音符とか2分音符みたいな大きい音符&アルペジオの時はあんまり目立たないけど、早いリズムで刻むものにはちょっと合わないかな。
それとキレイすぎるんだよね。

作りすぎた音というかアクがないというか・・・。
高田

そうそう、かかり方がイヤラシイんだよね。きっとギターにはキレイすぎる音は合わないんだと思う。キーボード系には合うんだろうね。
「H3000」 っていうウルトラ・ハーモナイザーの中の有名な 「リッチ・コーラス」 ってのがあるんだけど、これなんかゴージャスでキレイすぎちゃってギターの音じゃないみたいなんだよね〜。まるでシンセみたいな音になっちゃう。

デジタル系のコーラスは実はギター向きじゃないのかもしれませんね。
高田

今までいろいろ試してきたけど、やっぱりアナログっぽいコーラスの方がいいと思うな。
僕のラックのシステムにはSann製の 「Tri-Chorus」 っていうアナログの3層コーラスが入ってるんだけど、やっぱり適度な “あったかみ” があって3つ独立してかかるから厚みのあるサウンドで気に入ってます。エフェクトのかかり方もデジタルみたいにイヤラシくないしね。

確かにデジタルの音ってペラペラな感じがしますよね。
高田

デジタルの音って最初は “キレイ” って思うんだけど、バンドでみんなで音を出したりするとギターの存在感みたいなのがなくなっちゃうんだよね。


僕もそういう経験あります。で、このARIONの 『ステレオ・コーラス』 はどっちなんですか?
高田

う〜ん、アナログっぽいかな。安くていいのがあるって聞いてたんだけど、特に “モノ” でいい音がするらしいって話だったのね。まあ見てビックリだったけど音はいいよ!基盤がどうなってるかわかんないけど、デジタルっぽさは無いね。 〜試奏〜

いい音ですね〜。
高田

これはフラットな設定なんだけど、ツマミは3つあって左から “Rate” (スピード)、“Depth” (深さ)、“Tone” ってなってます。それぞれ12時方向にしてあってフラットな状態。低音の感じとかかなりあったかみがあってアナログっぽいよね。

音ヤセもなくて、太くてしっかりした音ですね。
高田

うん。最初に聞いた時に 「めずらしいな」 って思ったんだよね。

めずらしいというと?
高田

かかり方がわざとらしくなくて低音に深みがある感じがね。アンプの方で歪まして、おもいっきりかけてももぜんぜんOKだしね。デジタルだとこうはいかないから。それでアンプで歪ました状態で 『トレモロ』 っぽく使うのもおもしろいよ! 〜試奏〜

どんな設定なんですか?
高田

“Rate” を少し下げて(11時方向)、“Depth” を上げる(4時方向)のね。“Tone” はぜんぜんいじらなくていいよ!カッコイイでしょ?

カッコイイ!JCなのに・・・(笑)。

高田

今は “モノ” で使ってるから 「Out1」 だけにつながってるけど、アンプ2台で “ステレオ” で鳴らす時はもう片方のアンプに 「Out2」 からつなぐのね。
それで、この 『SCH-Z』 にはセレクト・スイッチが付いてて “ダイレクト” と “ステレオ” の2つのモードを切り替えられるようになってるのね。
このスイッチを “ダイレクト” に設定した時は 「Out1」 からは “エフェクト音” のみが出力されて、「Out2」 からは “ダイレクト音(ドライ)” のみがそれぞれ出力される形になるわけ。これはさっき話してたBOSSの 『CE-1』 に近い形だね。

片方が “エフェクト音” でもう片方が “ドライ音” っていう同じ設定の “ステレオ” になるわけですね。
高田

そう。スイッチを “ステレオ” の方にすると 「Out1」 & 「Out2」 の両方から “エフェクト音” が出力される形になるんだけど、今回の実験ではこのモードはあまりお薦めできないかな。あのね〜なんか 「Out2」 のレベルの方が少し大きくなっちゃうんだよね。(笑)

左右のレベルが違っちゃうんですか?その辺がやっぱり3,800円ですか?(笑)
高田

しかもエフェクトを切ってバイパスさせると、真ん中に 「ダイレクト音」 がいなくなっちゃうんだよ。
普通 “モノ” の信号をエフェクターで “ステレオ” にしてる場合、エフェクトを切った時は 「ダイレクト音」 がセンターにくるもんなんだけど、このエフェクターで “ステレオ・モード” でエフェクトをOffにすると、いないんだよ。 (笑)
どっから音が聞こえてるかわかんなくなっちゃう。これはたぶん位相が反転しちゃってるんだよ。開発する段階でわざとそうしたわけではないと思う(笑)。

し、失敗ですか?(笑)
高田

どうしても “ステレオ・モード” で使いたかったら、このエフェクターを 「スイッチ・システム」 の中に入れて常にOnにした状態で使うことだね。このエフェクター自体でOn&Offしないで 「スイッチ・システム」 でOn&バイパスという形で使うわけだね。
まあでも、こういう変なところもチープなエフェクターのひとつの “おもしろみ” だよね。意外なとこがあっておもしろい(笑)。

“味” というかなんというか・・・好きです。
高田

このセンターからいなくなる特徴をいかしてギターをレコーディングしてみてもおもしろいかもね。要するに位相が変わってることによって音が真ん中にいないから、ボーカルの定位を避けることができる。『ディメンション』 みたいに・・・(笑)。
こんなのやろうと思ってもできないよ〜。


で、エフェクトをOnにすると真ん中に戻ってくるわけですもんね。
高田

“ダイレクト音” の方が “ステレオ” で広げた音よりも外(左右)に広がってるんだからスゴイ!もう裏技の世界だね。“ダイレクト・モード” の時はなんの問題もないわけだし、スイッチひとつで切り替えられる “裏技” (笑)。

おもしろいけど、いつ使うんですか・・・?(笑)でも基本的な音はいいんですよね?
高田

うん。それはもうその辺のデジタルものより断然いいよ!低音の “あったかみ” がなんといっても最高だね。アダプターでもいけるけど電池の交換もすごいやりやすいし、使い勝手もいいしね。

デジタルの高音ばっかり強調した感じより、太くて味のある音ですよね。
高田

これね〜絶対ヒットすると思うよ!誰でも買える値段だし、ロック・バンドでやる人なんかは “モノ” で使うこと多いだろうし絶対いいと思うよ。

“モノ” での音はよかったですからね〜。
高田

今が 「買い」 だと思うよ!これねー売れたらどっかの大きいメーカーがパテントとって買い取っちゃうかもよ。そしたら絶対音変わっちゃうから、上野開発センターが作ってる今のうちに買っておいてください!

早速明日買いにいってきま〜す!
高田

(笑)でもそういう事ってよくあるから、安くていい 『コーラス』 探してる人にはこれは絶対お薦めです。偶然にしてうまくいっちゃたんだろうね。ほんといい音です。


最後に 『コーラス』 の基本的な使い方とか簡単に説明していただけますか?
高田

白玉とかアルペジオの時は基本的に深め(Depth)にかけると気持ちいいかな。ちょっと早いのを弾くとボヤけちゃうからそういう時は “Depth” を下げてあげるのね。でもこの 『SCH-Z』 は結構大丈夫かな。
あとはサイケな感じで 『トレモロ』 っぽくかける時は “Rate” (スピード)を早くして深めにかける感じ。そうそうこの “Rate” (スピード)を決める時は “Depth” (深さ)をいっぱいにして揺れをわかりやすく して、設定してあげるといいよ。

参考になりました!ありがとうございました。


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