高田二郎が斬る!

DL4を斬る!


 今回は久々にLINE6社の “Stomp Box Modelers” シリーズの「DELAY MODELER」 (DL4) に迫ってみたいと思います。


高田 じゃあ、行きますか! 久々のLINE6社製品なんだけど、今回はディレイ モデラー(DL4)だね。例のごとく気に入ったモデリングから話を進めていくから、よーく聞いておくように!
は〜い。よろしくお願いします。
高田 最初はね、懐かしの「エコーチェンバー」(Tube Echo)。「マエストロ EP-1」のモデリングからいきましょう。Echoplex社の最初の製品なんだけど、これの何がいいかって言うと、チューブで歪むとこ。
それはディレイ音も歪むんですか?
高田 いやいや、ディレイ音は歪まなくて、弾いた音(原音)だけが歪むかたち。まず原音だけ鳴らしてみるね。
うーん、チューブ・スクリーマーみたいな歪みだよね。この音にディレイ音を混ぜていくんだけど、これ、もともとはテープ式のディレイだから、TWEAKのツマミで「ワウ・フラッター」の調整までできるんだよ。
ちょっと待ってください。「ワウ・フラッター」って何ですか?
高田 テープ式のディレイってのは基本的にテープが回ってるわけでしょ? テープだから回っているうちにヨレたりするんだよね。ヘッドを通る時にヨレると“ホヨヨヨ〜ン”って感じになる効果のこと。カセットテープでもたまにあるでしょ?
ありますあります。特にのびてくると・・・。
高田 その感じをわざわざこのツマミで調整できるのよ。
どれくらい“ホヨヨヨ〜ン”とさせるかってことですか?
高田 そうそう。気が効いているというか、芸が細かいというか。もともとのテープ式のデリケートな感じをうまく再現していると思うよ。テープだと寿命があるけど、これならそんな気を使わなくていいしね。
テープがのびてきたところのシミュレートなんてすごいですね!
高田 そういう音の機材のいい加減なところというか、味のある部分を上手にモデリングしてるところがすごいね。それにDL4だとオリジナルよりもディレイ・タイムを長く設定できるようになってる。
あと一番右のボタンがTAP Tempoになっているんだけど、これはこのボタンをリズムにあわせて踏むことでディレイ・タイムを決められるのね。
その場で簡単にディレイ・タイムを設定できるから便利なんだけど、ms(ミリ・セコンド)でテンポを表示できないから、細かい設定には向かないかな。
感覚でやるしかないってことですね?
高田 そう。でも海外のミュージシャンなんかだといい加減だから、テンポがいくつって決まっていてもわざわざ計算機使ってディレイ・タイム出したりしないみたいよ。逆にピッタリ合っちゃうとディレイ音が聞こえなくなっちゃうし、ちょっとズレてるくらいのほうがいいんじゃない?
ノリが良くなれば別にいいわけだからね!
「こんな感じ」の世界ですね。
高田 そうそう。
音質も今のディレイと比べると良くないというか、こもってるよね。でも音楽の種類によっては、こっちのほうがいいって人も多くて、本物のテープ・エコーを今でも使っている人もいるくらいだもんね。デジタル・ディレイはやっぱりキレイすぎるから。
俺なんかは昔、ローランドの「スペース・エコー」持ってたんだけど、あれはかなりすごかったな。“マルチ・ヘッド”っていって、ヘッドがいっぱいあるとこを、テープが回ってるんだけど、ディレイ・タイムを決めるのにテープのスピードを変えてるんだよね。
この「Tube Echo」はヘッドの間隔を手でずらしてディレイ・タイムを決めてたんだけど、ローランドのはテープのスピードでやってたの。それとディレイのON/OFFはテープが動く、動かない、だったんだよ。
ヘッドが離れるかたちじゃなかったんですか?
高田 だもんだから、ONにした時に、前に使った時に録音されていた音が「フニャラ〜」って出ちゃうことがあったんだよねー(笑)。そのローランド「スペース・エコー」のシミュレートも、このDL4には入っているんだけど、さすがにそれはないね(笑)。
でもこの「Tube Echo」はローファイなディレイが出せて、なおかつ、歪ませられるわけだから、かなりすごいと思うよ。こんなのなかなか無いよね。
カッコイイですねー。
高田 エコーだけじゃなくてMixのツマミを“0”にして歪みの音としてだけでもかなり使えるよ。本物はデカいし重いしね。この次のバージョンのテープ・エコーが「EP-3」っていうんだけどこれは、ジミー・ペイジも使ってたやつだね。
こっちは歪ませないんですよね?
高田 こっちは歪まない、クリーンなエコーで今のディレイに近くなったかな。DL4だと歪まないかわりにトーンの調整ができるようになってる。

高田 次にむちゃくちゃ感心したというか気に入ったのがLINE6のオリジナルなんだけど「Sweep Echo」。
僕もこれ好きです。
高田 すごく幻想的な音が作れるよね。
うーん、これはすごいね。これは素晴らしい。ディレイ音に深いフェイザーがかかっているようなイメージだな! おもしろいのがディレイ・タイムを“0”にして、Mix“フル”してあげると、原音なしでこのスイープ音だけを楽しめる。
なんとも言えないあやしい世界だね。それにしてもほんと素晴らしいね。アルペジオとか大きいコードを弾く時には絶対あうね。気に入ってます。
いいですねー。

高田 次に使えるのが「Dynamic Delay」。これはTCエレクトロニクスの2290のモデリングで、どんなディレイかというと、ギターのフレーズを弾いている時には、ディレイ音を抑えて、弾き終わった瞬間にディレイ音が大きくなるっていうしくみになってる。
TWEEZのツマミで弾き終わったあとのディレイ音のボリューム・コントロールをして、TWEAKで“スレッショルド”、要するに、弾いている時にどれくらいディレイ音の音量をヘコますかってことを調整するのね。
俺がTCの2290を使っていた時は、ギター・ソロなんかであんまりディレイ音が大きいと何を弾いているかわかんなくなっちゃうから、このディレイを使って「弾いているフレーズは目立たせるけど、弾き終わった余韻が残る」ようにしてたかな。
音が残るのは、弾き終わる瞬間にディレイをONにしてるわけじゃないんですね!?
高田 あと、もう一つの便利な使い方は、スローなバラードなんかでアームとかアルペジオとかからめて演奏する時に難しいコード・チェンジがあったりしても、左手を離してる隙間をディレイの余韻がうまーく埋めてくれるんだよ。
そっかー、左手を離した時に前のコードの音がディレイ音としてもち上がって返ってくるから、コード・チェンジの隙間を埋めてくれるわけですね!次のコードを弾き始めたらディレイ音は小さくなるわけだし、これは便利ですね。
高田 そうそう。ディレイ音がうまくつないでくれるの。だからラクにコード・チェンジできるし、上手く聞かせられるよね。演奏をサポートしてくれる感じ。かなりおいしいよ。自分でも上手いなーって思っちゃうもん(笑)。
素晴らしいエフェクトですねー。

高田 次が「Auto-Volume Echo」。これもLINE6のオリジナルかな。
これはバイオリン奏法風になるエフェクトだね。バイオリン奏法ってよくやったよね!レスポールだとボリュームが下すぎてできないんだよね(笑)。小指が届かない・・・。バイオリン奏法って、ビブラートのかけ方によっては、ほんとにバイオリンに聞こえるんだよ。
昔、サディスティック・ミカ・バンドかなんかで高中正義さんがストラトで弾いてたんだけど、最初はバイオリンかと思ったもの。
手でボリュームを上げるからニュアンスがなかなか難しいんですよね。
高田 そう。でもこのエフェクトを使えば簡単にできちゃう。あと、単音だけじゃなくてコードでやってもなかなかいい感じになるよ。もともとの設定がいい感じになってるからね。
なんか絵が浮かぶような、幻想的な感じがいいですねー。
高田 うん。幻想的。このもともとの設定が普通に手でボリュームを操作するよりマイルドで幻想的なんだよね。これにホール・リバーブなんか足したらかなりイケるね。さらにTWEAKのツマミでモジュレーションもかけられるし、すごく気に入ってる。
こんな感じのイントロ、どっかで聞いたことあるな〜。
高田 ほんと、使える音だね。DL4には他にも初期のデジタル・ディレイ風にわざとビット数を落としてあるものとか、24ビットの最上級のもの。さらにそれらにモジュレーションをかけられるものなど、いろんなディレイがモデリングされてるね。「Rhythmic Delay」はTAPでテンポを4分で踏むと、それに合わせてディレイ音がリズムを刻んでくれるんだけど、その設定に付点音符がないのがちょっと残念かな。3連はあるんだけどね。あとは「Stereo Delay」がおもしろいかな。
U2のあれですね。
高田 そうそう。あれは自分は8分で弾いて、ディレイのリピートに16ビートのグルーヴをさせるっていうやり方なのね。つまり“タン・タタ”っていうリズムで8分音符ひとつと16分音符ふたつのパターンなんだけど、最初の8分を自分で弾いた時に、ディレイの音が右と左で16分の3つめと4つめに鳴るようにする設定なわけ。でもDL4では足でTAPテンポを踏む形だから、ちょっと難しいかな。左右ともピッタリ合わせるのは至難の技だね。こういうのは数値で設定するディレイの方がやりやすいね。
そうですね。偶然うまくいったらラッキーくらいな感じで。

高田 あと、DL4でおもしろい機能は「Loop Sampler」だね。これは、時間を計ってみたんだけど13秒くらいのサンプリング(録音)が可能なんだよ!これだけあると、かなりいろんな事ができるよね。ループ再生させるのはもちろん、フレーズを半分の速度にしたり、リバース再生させたりもできるしね。あと、無限にオーバー・ダブできるのもすごい!音を重ねていくと最初にサンプリングされた音は、少しずつ小さくなっていくらしいけど。
楽しいですね。
高田 まぁこれも慣れが必要だとは思うけど、リズム・マシンとかに合わせてまず2小節くらいのフレーズをサンプリングして、ループ再生させておいて、その上にソウル調のバッキングを重ねていったりすると、いい感じになるよ。
アイディアを試すのにもいいですよね?
高田 そうだね。ギター2本のバッキングを考える時とか、ワン・コードの曲でのソロを考える時なんか、片方のパートをループ再生しておいて、流しながらいろいろ試せるから便利だよね。わざわざレコーダーの中の録音したトラックを呼び出したりしなくていいから、お手軽だよね。
ライブなんかでも使えますか?
高田 うん。テンポの決まってる曲なんかだったら、あらかじめフレーズをサンプリングしておいて、曲中のその場所にきたら、PLAYボタンを踏んで呼び出すこともできるよね。このあいだ、スコット・ヘンダーソンのライブを見に行ったんだけど、曲の後半でソロが終わってギターから手を放してるのに、まだソロが続いてた時あったから、多分この手の「Loop Sampler」みたいなのを使ってたんだろうね。
僕もアコースティックのソロのライブを見に行った時に、1人で弾いてるはずなのに、リフを弾いた後、そのフレーズがそのままバッキングになってて、その上でアドリブしてた人を見たことがあるんですけど、そんな使い方もできますよね?
高田 そうだね、ギターが1人しかいないバンドだったりした時も、そういう使い方できるね。これはディレイとは違う機能だけど、使い方によってはまた違った楽しみ方ができておもしろいね!

じゃあ、こんなところで総評お願いします。
高田 率直に言えば、このDL4もほんとよくできてます。それと、これに関してはもともとのプリセット設定が、どれもかなり使える設定になってるところがいいと思うね。最近のデジタル・ディレイは、どうしてもキレイすぎてギターには合わない気がするんだよ。このDL4なんかだと、曲とギターが一緒になった時にできる“世界観”をきちんと演出できるディレイを選べるから、かなり使えると思うよ。最高です!
ありがとうございました。


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