高田二郎が斬る!

パラ・イコを斬る!


今回は、高田さんが使用されているTCエレクトロニクスの2240というモデルを例に、『パラメトリック・イコライザー』(パラ・イコ)について大いに語っていただきます。


高田 今回は、『パラ・イコ』 (パラメトリック・イコライザーの略)について話してみるね〜。
う〜ん、難しそうですね。
高田 ムズカシイよ〜(笑)。俺が使ってるのは 「TCエレクトロニクスの2240」 っていうモデルなんだけど、これは同じものが2段になってて、ステレオとしても使えるし、独立した2つのモノラルのエフェクトとしても使えるのね。
場合に応じて、使い分けられるからいいですね。
高田 そう。そもそもなんでこれを買ったかというと、バッキングの時とリード・トーンの時のEQを変えたかったからなのね。
こういうラックのシステムを組む前はコンボ・アンプを使ってて、1つのアンプでキャラクターを2種類も3種類も作れるものが、そんなになかったから 『パラ・イコ』 を使って、音のキャラクターを変えてたの。
今はコンボ・アンプでもいろんなキャラクターの音を作れるものが、たくさん出てるけどね。
イコライザーで「音作り」したり、「ブースト」させたりしたんですね?
高田 オーバー・ドライブをかけた時なんかに、より“ 中域 ”を強調したりとかね。
アンプ自体にも「トレブル」・「ミドル」・「ベース」・「プレゼンス」って具合にEQはついてるけど、アンプ・メーカーが指定した周波数のブースト&カットだから、自由に音を作れるわけじゃないのね。
変えられる周波数ポイントが固定されてしまってるから仕方ないですよね。
高田 そこで、『パラメトリック・イコライザー』 が登場するわけ。
『パラ・イコ』 だと自分で決めた周波数ポイントを上げ下げできるし、“ BANDWIDTH ”(Q)っていうツマミで、「決めた周波数ポイント」の周辺を変化させたり、そのポイントだけ突出して変化させたりできるのね。レコーディング用ミキサー卓にもよく使われてるよ。

EQツマミの横に周波数帯が書いてあるやつですね。『パラ・イコ』 の使い方の“ コ ツ ”みたいなのってあるんですか?
高田 『パラ・イコ』 って最初ぜんぜんわけがわかんないんだよね(笑)。
はい。周波数とかいきなり言われても、わかりにくいです。
高田 でも、1回コツをつかめば結構カンタンだよ!
「音」って、低域から高域までの波の速さが違うから、それを周波数(Hz)で表すんだよ。数字が大きい方が速いってことだから「高い音」ってことになってるのね。
だから低い音は「Hz(ヘルツ)」で高い音は「kHz(キロ・ヘルツ)」という表示になるわけかー。わかりました!

高田 で、このTCの「2240」は4バンドの 『パラ・イコ』 で、低域から高域にかけてある程度決められた周波数帯を4つに分けてコントロールするようになってるのね。
オーソドックスに使うなら、左が低域で、右にいくにつれて高域をコントロールするように4つのバンド(CENTER1〜CENTER4)が配置されてる。
各バンドの周波数帯が決まってるんですね。だんだん高域に範囲が変わってますね。
高田 ライン・レコーディングだと、“ レンジ ”が広いからこのツマミがかなり効くんだけど、アンプで鳴らす場合はスピーカーの性能が悪いからっていうか、ギターらしいサウンドにするためにスピーカー自体が「フル・レンジ」に鳴らすような設定になってるから、いくら高域をブーストしたりカットしたりしても表現できないのよ。表現の幅が限られてるというか・・・。
そうなんですかー?
高田 でも、それぞれギターによって多少の違いはあるけど「ギターの音の周波数ポイント」ってのがあって、ギターらしいサウンドを作ってるところが、だいたい決まってるからそれで十分なんだけどね。

詳しく教えてください!
高田 このシステムだと 『パラ・イコ』 (TC2240)はフットスイッチの5番にプログラムされてるんだけど、実際に音を出しながら詳しく説明してみるね!
高田 まず、各バンドにツマミが3つずつあって、“ CENTER ”のツマミで「周波数ポイント」を決めて、“ BANDWIDTH ”のツマミで「変化させる幅」を決めるのね。
あと、この“ FUNCTION ”っていうツマミは「ゲイン」になっていて12時方向で“ 0 ”、右に回すとプラス(ブースト)、左に回すとマイナス(カット)ってことだね。このツマミが“ 0 ”の時は他のツマミがどういう設定になっていても音に変化は無いのよ。
この3つのツマミで音を作るわけですね。効果的な周波数ポイントを見つける「や り方」ってありますか?
高田 俺の場合はまず、“ FUNCTION ”のツマミを+20dbまでフルに上げちゃうのね。
そして、“ BANDWIDTH ”も右に回しきって、ポイントを最も突出させる設定にして、“ CENTER ”を回しながら「一番カッコいい音になる周波数ポイント」とか「自分のほしい音・ねらった音に近い音になる周波数ポイント」を探していくの。
極端に強調したセッティングにした方が「周波数ポイント」を見つけやすいってこ とですね!

高田 そう。じゃあギターをスピーカーで鳴らした時に音がどう変化するか確認しながら、6弦側の低域から順にセッティングしていってみるね〜。
お願いします。
高田 例えば、歪ませた音でミュートを効かせながら8ビートを刻む場合なんかは、Lowが出てないとカッコ悪いから5&6弦を弾きながら“ CENTER1 ”を回してLowが一番出るポイントを探していくの。〜試奏〜
ここが一番Lowが出てるね!メモリでは 『100Hz』 になってるかな。でもツマミに刻んであるメモリにはあんまり頼らない方がいいよ。結構違うから(笑)。
ポイントが見つかったら“ FUNCTION ”と“ BANDWIDTH ”を元(0)に戻して、今度は“ CENTER2 ”の設定に移るのね。
  5&6弦が“ CENTER1 ”だったから、だいたい4&5弦あたりを“ CENTER2 ”で設定する感じ。さっき“ CENTER1 ”を 『100Hz』 に設定したから、それよりも高い周波数ポイントを探すことになるね。“ FUNCTION ”と“ BANDWIDTH ”のツマミをフルにあげて、4&5弦を弾きながら“ CENTER2 ”のツマミを回していく手順ね!〜試奏〜
今度はだいたい 『200〜500Hz』、もしくは 『1kHz』 くらいがいい感じかな。低音がほしければ 『200〜500Hz』 の間で選んだ方がいいね。周波数ポイントが決まったら、また“ FUNCTION ”と“ BANDWIDTH ”を12時方向(0)に戻しておくこと。
「やり方」がわかってきました!

高田 今度は3&4弦あたりを“ CENTER3 ”で設定するね。同じ手順で探していくんだけど、いろいろ試した結果、ギターらしいサウンドを決めるEQってのは 『1k〜2kHz』 あたりがかなり影響してるってのが僕の印象かな。『1k〜2kHz』 の出る加減でかなりサウンドが変わるから、この辺は大事なポイントだね。〜試奏〜
かなり変わりますね〜。

高田 ここが、ギターらしいサウンドを作るポイントだからね。これで中域の設定ができたから、最後に高域(1〜3弦)の設定だね!
高域のツマミ(CENTER4)は“ 20kHz ”ってとこまで刻んであるんだけど、このくらい高音域になると聴感上ほとんどわかんないんだよね。〜試奏〜(20khzをブースト&カットする)
ほんとだ。ほとんど変わらないですね。
高田 まあ、高域すぎるとスピーカー自体も表現できないんだけどね。ギターの“ 高域 ”はだいたい 『5k〜10kHz』 くらいが限度かな。〜試奏〜
高域も“ CENTER4 ”のツマミを回して、周波数ポイントを決めたらとりあえず“ FUNCTION ”と“ BANDWIDTH ”をもとに戻すのね。これで準備完了!
低域から高域まで4つの周波数ポイントが決まったわけですね。

高田 今度は各チャンネルの“ FUNCTION ”(ゲイン)と“ BANDWIDTH ”(Q)のツマミをそれぞれ「上げ&下げ」してサウンド全体のバランスをとっていくわけ。
でも 『パラ・イコ』 は自分の求めるサウンドに近付けるために使うわけだから、ギター自体の“ 生 ”の音が気に入ってる人は使う必要ないよ。
「ほしい音」が自分の中でイメージできてることが大事なんですね。
高田 そう。例えば「オーバー・ドライブ」サウンドでバッキング用の音を作るとするよね。〜試奏〜 
で、もうちょっと“ Low ”がほしい場合は“ CENTER 1”の“ FUNCTION ”を少し上げてブーストしてあげるの。〜試奏〜
そして、さらに“ Low ”がほしいと感じたら2番目に設定した“ CENTER2 ”もブーストしてあげる。〜試奏〜
かなり迫力が出ますね!
高田 これに“ CENTER3 ”で設定した『2kHz』を少し足して・・・〜試奏〜(ハウリングがおきる)。
ギターにとって 『1k〜2kHz』 は大切なポイントだって事はさっき話したけど、このポイントは同時に、ギターがもっとも“ ハウリング ”をおこしやすいポイントでもあるんだよ!
「両刃の剣」みたいですね。

高田 今度は、このポイント(2kHz)を少し下げてみるね。〜試奏〜
“ ジャリジャリ ”するっていうか“ スッキリ ”したよね。耳につく感じも減るしね。低域を上げて中域を下げることによって、「あんまり耳ざわりな感じの無い重低音」な音が作れたわけだね。なおかつ“ ジャリ ”っとした感じも出てていい感じ!
迫力があって“スッキリ”したいいサウンドですね〜。
高田 〜試奏〜 うん。音圧感が得られるし耳ざわりのとこもとれるから、結構大きい音量で鳴らしても“ Low ”はくるけど耳にはつかない感じになるわけ。
でも「リード・トーン」になると逆で、このセッティングみたいに“ 1k〜2kHz ”下がってると、「音圧感」はあるけど「リード」を弾くと“ ペラペラ ”した感じになっちゃう。
「リード・トーン」の場合は“ 1k〜2kHz ”が多少出てないと音が前に“ ヌケ ”てこないわけ。少し中域(CENTER3) を上げてあげると。〜試奏〜 こんな感じ。
音の“ 芯 ”も出て、なおかつ“ ヌケ ”ててリード向きのサウンドになりますね。同じ「オーバー・ドライブ」もEQでこんなに変わるんですね〜。
高田 そう。この2つのセッティングを切り替えて使うわけ。今のデジタルの機材ならセッティングをいくつもプリセットできるけど、アナログの場合これ(TC2240)みたいに2ch仕様のものをモノラルで分けて使う形になるよね。各自、工夫してみてください。
あと“ BANDWIDTH ”(Q)のツマミなんだけど、これは右に回す(数値が大きくなる)につれて指定した周波数ポイントの山が高くなるのね。『2kHz』を指定してブーストした上で“ BANDWIDTH ”をフルにするとポイントが突出してこんな感じになる。〜試奏〜
音が奥まった感じになっちゃいますね。
高田 これは音楽的な音ではないね。おもしろいけど。でもボーカルのハウリングをとる時なんかは、その周波数ポイントだけをピンポイントで下げられるから便利だよ。ハウリングを抑える時には有効だね。
逆に“ BANDWIDTH ”を左に回して(数値が小さくなる)“ FUNCTION ”でブーストしてあげると、指定した周波数の周辺ごと持ち上げることになるわけ〜試奏〜
ぜんぜん変わっちゃいますね〜。ムズカシイ・・・

高田 『イコライザー』 ってその周波数を上げるか下げるかでぜんぜんキャラクター変わっちゃうから難しいよね。初心者によくありがちなのが、全部上げながら音を作っちゃうこと。4バンドをうまくバランスさせながら音を作っていくのが“ コツ ”なんだけど、すぐには難しいから色々試してみるしかないね。耳と経験です。
この「TC2240」のことを、よく“ 線が細い ”っていう人がいるんだけど、それは結局ね、上げすぎちゃって“ BANDWIDTH ”もいじりすぎちゃってるだけなんだよね。良くしようとしていじりすぎて、逆に壊しちゃってるわけ。ちゃんと理解した上で使えばぜんぜん“ 線が細い ”なんてことは無いよ。
“コツ”をつかむには時間がかかりそうですね・・・
高田 うん。いろいろ実験してみるしかないね。スピーカーを通した時より、ラインで鳴らした時の方が変化がよくわかるから特性を理解しやすいと思う。最初はラインで試してみるといいよ!

わかりました。高田さんは具体的にどんな風に『パラ・イコ』を使ってるんですか?
高田 俺の場合、さっきやってみたみたいに歪んだ音で「耳ざわりにならずに低音のある」バッキング・サウンドを作る時に使ったり、このラックの中の「Tri Stereo Chorus」(アナログ・コーラス)を使う時に 『パラ・イコ』 を通したりしてるよ。このコーラスはアナログで音がちょっと甘めになっちゃうから 『パラ・イコ』 で高域の“ 5kHz ”あたりを5dbくらい上げて補正してる。
あとはライン・レコーディングの時によく使うかな。この間作ったアルバムの中で「Sans Amp」が大活躍したんだけど、クランチの歪みの時に「Sans Amp」の“ Low ”がちょっと弱かったから 『パラ・イコ』 を直接つないで“ Low ”をブーストしてEQ補正をしたのね。
そういう場合はやっぱり、「歪み」の後に「EQ」をつなぐわけですよね?
高田 そう、あと。だいたい「EQ」ってのは仕上げだからね。ライン・レコーディングの場合なんかだと、家で音を作っていって、そのままミキサー卓につっこんで、エンジニアに「EQはいじるな!」って言うこともよくあるよ(笑)。
すごいですね(笑)。空間系のエフェクトなんかの場合は、前につなぎますよね?
高田 プリ・アンプって考え方をすると、空間系の前に「EQ」をつなぐことが多いかな。基本の音の仕上げに「EQ」を使う感覚かな。
よくあるんだけど、レコーディングした後コントロール・ルームで自分のテイクを聞くでしょ?その時に、あんまりコンタクトのとれてないエンジニアだと自分の思ってる音になってなかったりするのね。そういう時はミキサーの「EQ」をいじらせてもらうんだけど、俺の場合、今みたいな調子でフルアップにして設定するもんだからレベル・メーターが振りきっちゃうのね。エンジニアは壊れるんじゃないかってヒヤヒヤして見てる(笑)。
でも見てると日本のエンジニアってメモリ見ながら、ちょこちょこっとしか上げないんだよね。やっぱり「ガーッ」っとブーストして目じゃなくて耳でポイントを見つけていかないと、いい音なんて作れないと思うよ!メモリは見ない(笑)!

カッコイイとこを耳で探すのが一番ですよね!
高田 それが基本だね。でもアマチュアの人ってあんまり「EQ」に感心ないみたい。
生徒とかによく言ってるのは、アンプにプラグ・インしたら、まずアンプの「EQ」を全部“ 5 ”にしろってこと。“ 5 ”を“ 0 ”と考えて、そこから音を作っていくわけ。
だいたい全部を“ 5 ”にした時がそのアンプの「標準」のチューニングになってることが多いからね。
パット・マルティーノもおんなじ事を言ってました。全部“ 5 ”にしてから目をつぶってツマミを回して、音を作るんだそうです。
高田 大事な事だよね〜。メモリにたよらずにね。みなさんも「EQ」について関心をもって、研究してみましょう!
最初は難しいだろうから、自分の好きなギタリストのCDをかけながら、そのギタリストの音に近付くまで、ツマミをあれこれいじってみるといいよ。“ Low ”はこんな感じとか“ High ”はこんな感じとかね。
そして、バランスを考えながら音を作っていくことが大事だよ。コンサートのエンジニアなんかが一番こだわるのが“ Low ”の部分で、ベースとバス・ドラの波長のバランスをとるのに一番時間をかけるもんね。ギターなんか、あっという間に終わっちゃって、もっと弾かせてくれ〜って感じ。
個々の楽器の「EQ」も大事だけど、アンサンブルになってくるといろんな楽器があるから、とにかく全体のバランスを考えて「EQ」していく事が大切になってくるんだよ。
その通りですね。たいへん参考になりました。では最後に一言お願いします。
高田 『音楽は“ バランス ”だー!!』ってことで(笑)
(笑)ありがとうございました。

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