高田二郎が斬る!

コンプレッサーを斬る!


今回は、現代の音楽シーンにおいて欠かせない存在の、「コンプレッサー」 について高田さんにいろいろ伺いました。


高田 じゃあ、今回は 「コンプ」 特集ってことで話をしていくね。
よろしくお願いします。
高田 昔、 MTR(マルチ・トラック・レコーダー)で録音して、自分でミックス・ダウンして、ステレオにまとめてできあがった自分の音楽と、他のCDとを聞き比べたのね。何かが明らかに違う!特に音圧感がぜんぜん違うんだよね。おんなじレベルまでボリュームを上げてやってるのに音量がぜんぜん違うように聞こえるのよ。
僕もそういう経験あります。
高田 あれって 「コンプ」 のせいなんだよね。ちゃんとしたCDの方はマスタリングの時に、最終的な 「トータル・コンプ」 をかけてる。最近は自分でCDを焼いたりすることも簡単にできるし、「コンプ」 に対する知識は非常に大切だと思うよ。
絶対に必要ですね。
高田 で、「コンプレッサー」 って結局じゃあ何か?っていうと、大きく分けて、『ある一定のレベルの上限以上にいかないように、信号(音)を押しつぶす効果』 と 『低いレベルの音を持ち上げる』 という2つの特性を持っているエフェクターなのね。
だから、マスタリングの時なんかに 「トータル・コンプ」 をかけたりすると、『音量は変わらないのに、音圧感は増す』 という効果が得られるんだよ。激しい音楽なんかだと、レベル・メーターがフルに上がりっぱなしだもんね。(笑)
これはもうCDのマスタリングにとどまらず、ギターやベース、ドラム、ボーカル・・・、すべてにおいて使うね。
音を録音する時からもう 「かけ録り」 する場合も多いんですよね?
高田 そう。俺が今、一番便利に使ってるのはこのdbx社の「160x」っていうすごい昔に買ったコンプなんだけど、112Vに電圧をわざわざステップ・アップして使わなくちゃいけないやつで、当時これしか売ってなかったのよ。昔、これを買う前は安物のコンプを使ってたんだけど、何がイヤだったかというと、弾いた一発目の音はデカくて、あとは「コンプ」がかかって小さくなるとこ。
一発目に弾いた音がでてしまって、そのレベルに反応して 「コンプ」 がかかるわけですね。まるでラジカセの内蔵マイクで録った時みたいですね。
高田 そうそう。ラジカセとか録音用のMDとかの 「コンプ」 と一緒だね。あれはピークを超えて音が割れてしまわないようにAutoで録ると自動的に 「コンプ」 がかかるようになってるからね。まあ、そういう風に 「ピーク」 を押さえるというねらいで使うことも多いんだけど、その他に 『レベルの低い音を持ち上げる』 方の特性を活かして、クリーンな音なんかの時に 「サスティーン」 をかせぐっていう使い方もできるよね。

「コンプ」 についてだんだんわかってきましたが、複数のエフェクターをつなげる時には 「コンプ」 はどの位置にセットしたらいいんでしょうか?
高田 マルチ・エフェクターの設定なんかを見てみると 「コンプ」 はだいたい最初の方にかかってることが多いね。
今日、俺がここに持ってきてるシステムにおいては、プリアンプのあとに 「コンプ」 がきてるのね。で、使ってるプリアンプが“クリーン”、“クランチ”、“オーバードライブ”の3チャンネル仕様のやつなんだけど、俺の場合“クリーン”の時に限って 「コンプ」 を使うことにしてるの。
やっぱり、この設定みたいにプリアンプのあとに 「dbx(コンプ)」 を通した時は“クリーン”以外の“クランチ”“オーバードライブ”の場合の音のヌケが悪くなってしまう傾向があるかな。
歪みのあとに「コンプ」をつなぐとヌケが悪いってことですね。
高田 そう。だけど、音圧はでるのよ。特に低音のね。あと、この3チャンネル・プリアンプの3種類の音のトータル・レベルを統一できるっていうメリットはあるんだけど、やっぱり音楽的な 『音質』 は落ちるかな。プリアンプのあとの 「コンプ」 という設定だと“クリーン”以外はあんまり使えないね。
いつかのレコーディングの時に、歪んだ音のバッキングに 「コンプ」 をかけたエンジニアがいたんだけど、もう最悪の音だったね。(笑)
やっぱりダメなんですね。
高田 うん、8ビートのバッキングでガンガンやってるところに 「コンプ」 をかけるもんじゃないね。プリアンプまでは微妙なピッキングのタッチとか変化してるわけだけども、そこに音の大小をそろえてしまう 「コンプ」 をかけると“シャリシャリ”な感じになっちゃうんだよ。でもこれがプリアンプの前に 「コンプ」 をもってくると、オーバードライブの音も結構イケるんだよ。やったことある?
あります、あります。音粒が立って、うまくなった気がしました。
高田 昔、『オレンジ・スクィーザー』 っていうコンプがあったのね。確か 「ダン・アームストロング社」 ってとこから出てたと思うんだけど、いろんな色のがあって、オーバードライブとか何種類かラインナップがあったかな。
  小さい箱型でギターのジャックに直接差し込んで合体させて使うんだけど、その 『オレンジ・スクィーザー』 は 「コンプ」 だったのね。
当時はリー・リトナーとかジェイ・グレイドなんかが使ってて、「コンプ」 のあとにオーバードライブをつなぐってのが、ジェイ・グレイドの特徴的なサウンドになってたのよ。
これが結構気持ちよくて、ボスの 「OD-1」 っていうオーバードライブを通してたと思うけど、キメの細かい歪みになるのね。それと、サスティーンが特にキレイだったね。
確かにサスティーンはよくなりますね。
高田 すごいキレイにね。例えば1回のピッキングで“グリス・ダウン”してそのまま“グリス・アップ”する時なんかもキレイにだせるんだよね。音が切れないでよくのびる!
ほんとキレイにでますね。この場合は先に 「コンプ」 をかけて、その音がプリアンプ(歪み)にいってるんですね?
高田 そうそう。これは結構イイ感じ。でもやっぱりソロなんかではいいけども、ガンガンのバッキングには向かないかな。“クランチ”ぐらいの少ない歪みで大きなストロークをしたりするとサスティーンがのびるからイイ感じになるけどね。
なかなか奥が深いですね。
高田 それと、これが昔のアンプのシステムなんかだとエフェクターを全部アンプの前につないで最終的にアンプの歪みを通る形になってたから、かなりエグイ音になるんだよね。「コンプ」 に限らず 「ディレイ」 なんかかけちゃうとスゴかったね。(笑)
例えば 「マーシャル」 の歪みを使いたいけど、その前にエフェクターが全部並んでるとするでしょ。「エコー・チェンバー」 とか 「アナログ・ディレイ」 なんかがあったりすると、ディレイとかのかかった信号がそのまま歪んじゃうから、すごいエグイ音になるわけ。
それはかなりスゴそうですね。
高田 ディレイなんかの減衰していく音も、チューブの歪みは 『小さい音を持ち上げる性質』 があるからエフェクト音も大きくなっちゃってスゴイことになっちゃうわけ。
それは使える音なんですか?
高田 場合によっては使えると思うよ、すごい 「汚くて」、「エグイ」 音だから。(笑)逆に今風かもよ!今のシステムなんかだとプリ・メインのアンプでも、中でセンド/リターンを使って、空間系のエフェクトなんかもキレイにかかるように設定できるけどね。
でも、かえってエグイ音を出したい時なんかは、あえてプリアンプの前にエフェクトを全部かけっちゃたりするとおもしろいと思うよ。
かなり過激ですね!
高田 昔はどうしてもアンプで歪ませたいってのがあったから、空間系のエフェクトをかけると“グワングワン”しちゃってたね。で、しょうがないからアンプは“クリーン”でオーバードライブのエフェクターで歪ませたりとか、こういうラックのシステムを組んだりして、キレイに効果的にエフェクトがかかるようにしたけどね。
でも今となっては、かえってそういう 『御法度』 的なやり方もアリかな〜って思うけどね。
おもしろそうですねー。

高田 「コンプ」 に話を戻すと、この 「dbx」 のコンプは特にディスプレイが気に入ってて、インプット・レベルとアウトプット・レベル、コンプ/リミッターのゲイン・リダクションが目で見てわかるようになってるのよ。インプットがどれくらいとか、どれくらいコンプがかかってるかなんかを、このレベルメーターで目で確認できるからね。
それは便利ですね。
高田 あと、コンプの性質って非常に奥深いところがあって、ギターからすぐに 「コンプ」 につなげばギターの信号レベルってある程度一定じゃない。でもプリアンプのあとにつなぐと、プリアンプのレベルを上げ下げすることで 「コンプ」 のかかり具合が変わって、『音質』 自体が変化するするのよ。
入力レベルを変えて、「コンプ」のかかり具合をコントロールするんですね。
高田 そう。そうすると 「コンプ」 のかかり具合によって 『音質』 も変わってくるわけ。かなり奥深いでしょ?
あと 「コンプ」 には“スレッショルド”っていうツマミがあって、これでレベルの頭打ちを 「何db(デシベル)」 にするかを決めてあげて、“コンプレッション(レシオ)”のツマミでゲイン・リダクションの量を 「何:何」 にするかを決めるのね。要するに、比率が近いほど立ち上がりが速くなるわけ。
「4:1」 より 「1:1」 の方が立ち上がりが速いってことですね。
高田 これを 「10:1」 とか 「∞:1」 にすると“クショ〜ン”ってな音になるのよ。(笑)
あと、コンプによってはコンプのかかり始めの時間を調節する 「アタック」 とかコンプのかかり終わるまでの時間を調節する 「リリース」 のツマミのついた物も多いですよね。
高田 うん。なかなか難しいよね。あと、この 「dbx」 のコンプはアウトプット・レベル もレベルメーターで合わせることができるから、複数のプリアンプを使う時なんか便利なんだよね。
ギターのアウトプットはだいたい-20dbくらいだから、セッティング を急がなきゃならない時とか助かるね。ほんとは耳でやらなきゃいけないんだけど、だいたいの目安になるからね。
目だけでなく、必ず耳で確認しるってことですね!
高田 その通り!ハイラム・ブロックのアルバムで“ウェイ・クール”ってのがあるんだけど、このアルバムはいい 「コンプ・サウンド」 が聞けるアルバムだよ。
もともとの音はきっとチープなんだろうけど、「あと処理」 の仕方がエンジニアがうまいせいで、すごくいい感じになってる。
チェックしてみます。

高田 たぶんプリアンプの前に 「コンプ」 をかけてるサウンドだと思うんだけど、ピッキングのアタックの“点”が出ない感じで低音もしっかり持ち上がってる。いい感じです。
「コンプ」 ってハデなエフェクターじゃないけど、心地よいサウンドを作る上ではかかせないエフェクターだね。それに気付くには少し時間がかかるかもしれないけど・・・
僕なんか最近ですよ、コンプ使い始めたの。
高田 (笑)シールドを直にアンプに差すようなブルースとかジャズのミュージシャンは 「コンプ」 を嫌う人が多いもんね。でもジョン・スコフィールドとかマイク・スターンなんかの最近のジャズの人なんかはコンプ・サウンドの人多いよね。
みなさんもギターだけじゃなくて、いろんな楽器とか、ボーカル、ミックス・ダウンなんかに 「コンプ」 をかけてみてください。打ち込みや宅録でもぜんぜん変わるはずですよ!
質感とかぜんぜん変わりますよね。
高田 そう。使い方は難しいけど、この素晴らしさわかるともう病みつき。『コンプ中毒』 にならないように気を付けてくださいね!

では最後に一言お願いします。
高田 “コンプを征する者はサウンドを征する”ナンテネ!(笑)ぜひ「コンプ」を使っていろんな音を試してみてくださいね!
ありがとうございました。


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