『リハーサル・スタジオ編』 パート.
今回は、前回パート1での基礎的な流れを踏まえつつ、ギターだけでなく他のパートの録音をする時の注意点を紹介してみようと思います。ギターの録音には自信があっても、ボーカルやドラムをどうやったらカッコよく録音できるのかさっぱりわからない、という人はたくさんいるはずです。
バンドのデモテープともなればギターの音だけよくても仕方がないので、ここはひとつ「エンジニア」になったつもりで他のパートの録音にもチャレンジしてみてください。
シチュエーション1.ドラムの録音
「ドラム」と一言でいっても、生身の人間がたたくドラムと「打ち込み」によるドラムやサンプラーによる「ループ」のドラムなど、音色は様々です。「打ち込み」や「ループ」などは家で「ライン録音」することができるので、ここでは 生身の人間がたたくドラムを リハーサル・スタジオで「マイク録音」する時のヒントを紹介します。
 1.スタジオ入りする前に・・・
前回でも触れましたが、まず曲のアレンジなどを考えた上でドラムに何トラック割り当てるか、どのようなドラムサウンドにしたいのかなどをドラマーさんはもちろんメンバーで話し合っておきましょう。

スタジオに入ってからドラムの音色の好みで議論しているとハマってしまいますから、普段からドラムの音をよく聴いて録音することになった場合の音色をメンバーどうしで煮詰めておくことも大切です。
また「ドンカマ(クリック)」を使う場合はSTEP10のように「クリック音」を出せるように準備しておかなければなりません。補足にもなりますが 「ドンカマ」を使えば曲のタイムが一定になるのでそれにあわせて演奏したものを録音した場合、安定感がある演奏になりますから、なるべく使うことをお勧めします。
どうしても部分的にゆっくりした「タメ」を入れたい時や、テンポを早くしたい時は『シーケンサー』を使ってきまった小節だけテンポをかえられるようにすることができます。

この 『シーケンサー』は単体でもありますし、リズムマシンやキーボードなどに内蔵されていたりします。
HDRの内臓メトロノーム機能でもそれと同じことができる場合があります。

いずれにせよ、どのような形であれ 「ドンカマ」を使った録音方法が一般的です。


 2.スタジオ選び
意外と軽視してしまうのがここです。普段バンドでリハーサルをする場合、各々のメンバーの家から近いからとか、スタジオ料金が安いから、などの理由でスタジオを選んでいませんか?特にドラム録音の場合は部屋の音響特性が大きく音質に影響を与えるので、よいスタジオを探すことはとても重要になってきます。
大ざっぱですが次のようなこと目安になるでしょう。

ポイント1. 狭い部屋を避ける
極端に狭い部屋では不必要な音の跳ね返りが大きく、あまりドラム録音向きとは言えません。
なるべく広い部屋を使うようにしましょう。

ポイント2. 吸音処理がしてあるかどうか
スタジオ内の壁がただのコンクリートがむき出しになっていたり、真ったいらな平面である場合は、部屋の音響に注意が払われていない証拠です。
このようなスタジオもよいドラムサウンドを生み出すには不十分です。
壁の一部分に吸音材や学校の音楽室の壁にあるような反響板のようなものがあるスタジオだと安心してよいでしょう。
もちろんキチンとした「レコーディング・スタジオ」であれば音については大体安心できますが、料金もそれなりに高いようです。予算のことも考えるとなかなか判断の難しいところですが、少なくともバンドのリハーサルが終わった後に「耳鳴り」がしてしまうようなスタジオだけは避けるようにしましょう。


 3.何本のマイクが必要?

ドラム録音の際のマイクの本数については決まりはありませんが、「マルチマイク録音(複数のマイクをたてて録音する方法)」は初心者にとっては非常に難しいものです。
スネアに一本、バスドラにも一本、ハイハットにも一本、、、とプロのようにやっていくのは『位相*』の影響もあり目的の音を得ようとするには相当な時間と労力と知識を必要としますし、自分の持っているマイクの数やHDRのインプットもそんなにたくさんの「入力端子」を装備していない場合が多いはずです。マイクの数が少ない方がトラックの割り当てに悩まされることもないので、できれば2本のマイクを用意するとよいでしょう。1本をバスドラムの10〜30cmぐらい前に、もう1本をドラムセットから正面に2〜3mぐらいの距離で背の高さほどのところに立てるのが、僕の個人的なオススメ簡単「マイキング」法です。

もし1本しかマイクが用意できない場合はバスドラムの前に立てていたマイクを省くとよいでしょう。


* 『位相』についてはまた改めて詳しく説明しようと思います。



また2本とも2〜3mぐらいの距離で背の高さほどのところに間隔に立てて「ステレオ録音」するのもよい音が得られると思います。
☆実際にドラムをレコーディングしてみると、マイクをたてる位置の変化させるとどれほど音への影響があるかということを驚くほど実感すると思います。
「マイキング」の時に混乱しないためにも、まず最初にドラム自体の音をしっかり「チューニング」してもらって、好みの音に近い状態にしておいてから 「マイキング」に取りかかることが大切です。

 4.エフェクターは何をかける?
もちろん エフェクターについても決まりはありません。
ただし録音の補正という意味で「EQ」と「コンプレッサー」を使うことをお勧めします。
エフェクターはHDRに内蔵されているもので十分よいと思います。

ポイント1.
あまり極端な加工はしない
「EQ」は50〜70?以下位の低域をカットしたりする程度にしておくとよいでしょう。
50以下位の低域は実音よりもノイズ成分であったり部屋の中での反射音である場合が多いので、音を濁す原因である場合があります。のちのちの「ミックスダウン(様々な音が録音されたトラック同士をレベルなどを調整しながらバランスよく聞こえるようにすること)」のためにも極端なEQは録音の段階ではしない方がよいでしょう。

ポイント2.
「コンプレッサー」は浅くかける
コンプレッサーは入力レベルを稼ぐために、「リミッター」的な使い方をするとよいと思います。
step.9を参考にしてください。ここで注意してほしいのは、常に音がリミッティングされないように、最大入力レベルのギリギリのところでリミッターがかかるようにスレッショルド・レベルを調節してください。


ゲイン・リダクション が少ない状態がよい    



シチュエーション2.ボーカル録音
ボーカル録音においてもマイクの使い方など基本的なことはstep.8で説明した通りですが、マイキングについては細心の注意を払うようにしてください。やっぱり曲のメインとなる歌ですから、ここで思ったとうりのサウンドが録音できないとそれまでの苦労が台なしですよね。このように様々な角度や距離を変えてマイキングによる音色の違いを試してみてください。

※参考
これはあくまでも目安に過ぎません。マイクと歌う人の口までの距離を、だいたい10cmぐらいを基準だと思ってそこから離したり近付けたりしていくとよいでしょう。

ポイント1. 立ち位置をマークしよう
いったんマイクの位置がきまったらボーカリストの立ち位置にガムテープなどで印をつけて、常にその位置を守るように歌ってもらうとよいでしょう。せっかく念入りに決めたマイキングでも ボーカリストの立ち位置が変わってしまっては意味がなくなってしまいます。パンチ・インなどをしたりすると多少の音の違いも .ボーカル録音の場合はめだってしまうので注意してください。


ポイント2. 「吹かれ」に注意しよう
ボーカル録音には必ず 「吹かれ」を防ぐための「ポップガード」を用意しましょう(step.8参照)。
「吹かれ」とはボーカリストが突発的に発音するときにその音圧が直接マイクの振動板にあたってしまって出るノイズのことです。とても耳障りで後の修正もめんどうですし、コンデンサーマイクを使う場合は特に唾が振動板に付着するのも防いでくれますから、ぜひとも使ってください。
もちろん音色に制約が出ますが 「吹かれ」を防ぐマイク位置もありますから、それを探すのもよいでしょう。

※参考
『ポップガードの位置については、マイクから5〜10cmぐらい離した位置で歌う人の口とマイクの振動板のちょうど間になるように設置するのが基準と言えます。もし「コーラス・パート録音」などで複数の人が1本のマイクに向かって歌う場合はポップガードも複数用意するか、マイクの振動板を覆ってしまうタイプの ポップガードを使うとよいでしょう。』


ポイント3. 部屋の音響に注意しよう
ドラム録音のところでも述べましたが、ボーカル録音においてもやはりスタジオ内の音響による音色変化があることを知っておいてください。ただし音源から近いところでマイキングすることの多いボーカル録音の場合、反響音の影響の出方が多少ドラム録音の時とは異なりますから、スタジオの広さ自体にはあまり神経質になる必要はありません。ただしスタジオの真ん中に立つのと端に立つのとでは必ず音に違いが出ます。またどこにマイクを立てるかでも、同様です。とにかくいろいろ試してみるしかありませんが、先に説明した「吸音材」のあるスタジオの場合、その近くで壁に対して斜めにセッティングするとよいようです。
※参考
これもやはりほんの一例に過ぎません。
ボーカル録音の場合、いわゆる「デッド」な状態の音(壁などによる反響音がない状態の音)で録音することが一般的です。
これはなぜかというと、 ボーカルトラックは録音した後に「ディレイ」や「リバーブ」といった様々なエフェクターを使って音を作り込んでいかなければならない大切なものなので、録音されたトラックに既に反響音が含まれていると作業がしずらくなるばかりか、最終的に目的とする音色を作れなくなることにもなります。
もちろん、たまたま含まれていた反響音が曲にとてもマッチした!なんて事もないとは言えませんが、これはごく稀なケースといってよいでしょう。現在ほどホームレコーディングが一般的ではなく、またその周辺機器も高価であったり技術的な性能も優れていなかった頃は、ボーカル録音のときは自宅の風呂場にマイクを持ち込んでわざわざその反響音付きの声を録音したりしたそうですが、それも昔の話し。
HDRにマルチエフェクターが内蔵されているのが当たり前の時代ですから、ボーカル録音のときはできるかぎり「デッド」な音で録音するようにすることをお勧めします。
その意味で紹介した例はきっと試してみる価値あり!です。


ポイント4. エフェクターはどうする?
エフェクターに関してはドラム録音の時とほぼ同様だと考えてよいと思います。「EQ」と「コンプレッサー」はできるだけ浅めにかけて「音作り」は録音した後にやっていくほうがたいていはよい結果に繋がりますから、 ボーカル録音の際には、素の声をストレートに録音することを心掛けるとよいと思います。

 
ギタリストにとっては厄介な他のパートの録音かも知れませんが、デモテープ作りをとおして他のパートの録音をしていくことは客観的に自分のギター・サウンドをも見つめなおすことにも繋がりますし、結果としてギタリストとしての自分のテクニックの向上に繋がるものだと思いますから、根気よくやってみてください。

次回はバンドのライブにHDRを使うことをたくらんでみようと思います。



STEP12へ  ギターにハマる!INDEX
↓レコーディング機器の検索はJ-Guitar.comの「楽器を探す」で↓

★日本で最大級のギター登録本数と加盟楽器店★
新品・中古ギター(アコギ / エレキ / クラシックギター)、エレアコ / ベース / ウクレレ等の新品・中古楽器の他、アンプ / エフェクター / 周辺機器 / パーツ・アクセサリ / レコーディング機器も検索できます。
Copyright:(C) 2001 J-Guitar.com All Rights Reserved.