皆さんもすでに御承知のとおり、先月アメリカで大変ショッキングな事件が起きました。僕も事件直後に、あの悲惨なニュース映像を見て言葉を失いましたが、余りにも多くの人々のいのちを奪い、余りにも多くの人々のこころに深い傷を残す結果となってしまった様です。
ところがそんな中でもアメリカでは、早速大勢のアーティスト達によるチャリティー・コンサートが開かれました。その様子はここ日本でもテレビで放送されていたので御覧になった人も多いと思います。
  僕は期せずして、「音楽のもつ力」といえば大袈裟かも知れませんが、「人間の感情と音楽との密接な繋がり」を改めて認識させられた様な気がするのです。
ただ単に悲しみを癒すだけではない、訴えかけてくるようなアーティストたちのパワーを、多くの人が音楽をとおして感じ取ったに違いないと思います。
今後の世界的動向が気になるところですが、僕たちもメディアなどに惑わされることなく、冷静にかつ積極的に、たとえどんなに小さなことでも、できることがあるものと信じています。
デジタル式MTRの種類
さて前回までアナログ式カセットMTRを題材にして、MTRの活用法などを紹介してきましたが、MTRの基本を理解してもらったところで、さらにステップアップして、デジタル式MTRの活用法を紹介していこうと思います。
その前に今回はデジタル式MTRについて、知っておいて欲しいと思います。
ひとくちにデジタル式MTRといっても記録メディア(録音媒体ともいいます)の違いやミキサー機能の有無など、デジタル式MTRの大きさ形や機能は現在発売されているものだけを見ても、多種多様です。

a.
記録メディアの違いによる分類・・・・・・アナログ式カセットMTRにおける記録メディアとは、文字どおり「カセットテープ」でした。デジタル式MTRでは、「ハードディスク(以下HDと表記します)」をはじめ、
「MD-DATA(普通のMDとは違います)」、「ジップ(Zip)」、「エムオー(MO)」、「CD-R」など様々なメディアを記録メディアとして用いています。この中でも、もっとも大容量のデータを記録できる(つまり長い時間録音できる)「HD」が、現在のデジタル式MTRの記録メディアの主流であると言えます。また「HD」は「ランダム・アクセス」という特徴により瞬時に目的のデータを呼び出すことができるため、MTRに使用された場合、曲の構成の並べ替えや頭出しなどが素早くできるようになるメリットがあります。

b.
機能による分類 ・・・・・・デジタル式MTRではミキサー一体型といって、いくつかのフェーダーを備えていたりEQが付いていて音づくりができたAUXセンドができたりと、基本的なミキサー機能を備えたものが一般に普及しています。これはMTR単体で録音して編集もこなす1台完結型マシンといえます。それに対してミキサー機能を持たない、録音機能に特化したモデルもあります。こちらのほうは拡張性の要求されるプロの現場で使用されることを目的として作られています。形も一般のミキサー一体型デジタル式MTRとは異なり、ラック・タイプのものがほとんどで豊富な入出力端子を備えています。


デジタルとはなんぞや?
今世の中には「デジタル」と名の付くものが氾濫していますが、そもそも「デジタル」とはいったい何でしょう?
簡単にいえば情報の「数値化」です。ある情報(文字であったり音声であったり映像であったり時間であったり)はすべて0と1の信号に置き換えられることによって、コンピューターが計算をして、その情報を処理(変化)させたり伝達したりするのです。
例えば、デジタル式時計は時間が数字で表記されるから「デジタル」というわけではありません。
連続する時間をある一定のところで区切り、それを0と1の数値に置き換えて計算して測定し、僕達が時間として認識している数字に表記しなおしているのです。僕はその道の専門科ではないのでうまい説明ができませんが、ほとんどの「デジタル」物には、この0と1の計算をするコンピューターが入っているといってよいでしょう。

●デジタル式MTRはどのように録音をしているのでしょうか?
デジタル式MTRは、入力された音声波形(この段階はまだアナログ)を数値化された信号(デジタル)に変換してそれを記録します。これを再生する際には、デジタル化された信号をアナログ音声波形に変換して僕達の耳に届きます。デジタル式MTRにはすべて、「アナログ音声波形を数値化されたデジタル信号に変換(サンプリング)する」=「A/Dコンバーター」と同時に、「記録されたデジタル信号をアナログ音声波形に変換する」=「D/Aコンバーター」というものが内蔵されています。



☆デジタル式MTRのスペックにある「サンプリング・ビット」や「サンプリング・レート(周波数)」というものは、 この「A/Dコンバーター」が「アナログ音声波形を数値化されたデジタル信号に変換(サンプリング)する」際に、どれだけの細かい精度(時間)で音声データを測定し、どれだけの情報を信号として記録するか、を表わしているものです。
すなわち「サンプリング・ビット」や「サンプリング・レート(周波数)」をあらわす数字が大きいほど、より原音に近い録音ができる、ということになります。
逆にいえば、一度デジタル化された音は、決して原音と同じものではない、ともいえます。これはよい意味でも悪い意味でもなく、これからデジタル式MTRの活用法を紹介していく上で、理解しておいてほしいことなのです。



「HD」MTRはこんなに便利!
「HD」を記録メディアとするミキサー一体型
デジタル式MTR(以下、HDRとします)の
メリットは先にも述べましたが、さらに特徴を掘りさげてみましょう。
これを知ったら、HDRを持っていないキミはゼッタイ欲しくなる!?
見た目もかっこいいしね。


1.音がイイ!

先程、「デジタル音声は原音とは違う!」なんていいましたが、「まったく同じではない」と言いたかっただけで、HDRの場合、人間の聴感上は問題無いほど原音を忠実に再現できるモデルがほとんどです。
実際、僕達が普段耳にするCDの音も実は16ビット・44.1kHzで記録されたデジタル音声ですが、イイ音してるしょ?むしろ一度デジタル化された音声は、編集などの際のノイズの混入や音質の劣化がないので、最終的にはアナログ式カセットMTRと比べれば音質の差は歴然です。
24ビット・96kHzのハイ・サンプルレートでCDフォーマット以上の高音質で録音するものもありますが、これをCDに焼く際には16ビット・44.1kHzに変換しなければなりません。

2.トラック数が多い!

大容量「HD」の装備によってトラック構成が格段に増えました。すくなくとも8trの同時再生数をもつものから、24trなんていうプロ並みの物もあります。さらに仮想トラックといって階層上にトラックをもつものがほとんどで、たとえば8tr×8tr=64trのトラックものトラックがあれば、ギターソロを何テイクかとっておいてよいものを選んだり、いろんなミックス・パターンをピンポンして聞き比べたり、可能性はほぼ無限です。


3.編集が自由自在!

例えば、曲の構成がA-B-C-A-B-Cとなっている曲をアレンジして、A-A-C-B-A-Cに簡単に変えられたりするのも、HDRの大きな魅力の一つ。しかもすべての作業はノン・ディストラクティブといって、前のデータが消されずに残っているので、たとえ失敗してもすぐに前の状態に戻れます。また、曲中のAの部分だけリピート再生したり、あらかじめマークしておいた場所に瞬時に頭出ししたり、指定した区間の間だけでパンチ・イン、パンチ・アウトができたりと、録音・再生におけるストレスがほとんどありません。

4.エフェクターもあるぞ!

最近のモデルではエフェクター、しかもマルチ・エフェクターといってEQやコンプレッサーはもちろんアンプ・シミュレーターやディレイ・リバーブなどを内蔵しているのが多いようです。ギターを直接つなげるHi-Z入力端子をもっているモデルであれば、1台でギターの音づくりからミックス・ダウンまでできてしまいますね。


5.ミキサー機能も強力!

パッと見でもわかる通り、HDRにはフェーダーが付いている、すなわち高性能のデジタル・ミキサーが内蔵されているのです。「シーン・メモリー」と言って曲中でもミックスの状態を瞬時に記録または呼び出しができるので、斬新なアレンジもお手のもの!


6.持ち運びができる!

HDRのサイズは様々ですが、基本的には持ち運びが可能です。バンドのリハーサルのときにスタジオにもちこんで一発録りしたり、ライブのときにシーケンサーとして使ったりと、家の外でも大活躍します。


自分に合ったHDR を探そう!
さて、HDRの特徴をわかってもらったところで、さっそくHDRを購入したいところですが、いきなり楽器屋さんにいっても目移りしてしまってなかなか決められないものです。
買う前に以下のことをあらかじめ考えておけば、自分に合ったHDR選びができるかもしれません。

●自分の好きな、あるいはやりたい音楽ジャンルによっても、必要とするトラック 数やエフェクターも変わってくるかもしれません。
例えば、弾き語りしかしません!という人には24trなど必要ではないでしょうし、音質にこだわってコンデンサー・マイクで
アコースティック・ギターを録りたい!という人にはコンデンサー・マイクに電源を供給するファンタム電源を装備していると、
コンデンサー・マイクを 直接HDRにつなげて使えるので便利でしょう。

●音質についても、カタログのスペックだけで判断できる物ではありません。
 楽器に詳しい店員さんなどに聞いてみるのもよいでしょう。


●以外と忘れがちなのがHDRのサイズや重さです。僕もライブでシーケンサーとして使うことがよくありますが、結構大きめのHDRを持ち歩くのは実は大変です。
機能との兼ね合いもありますが、大事なポイントですよ。

僕自身、HDRを使う頻度はかなり多い方だと思いますが、パソコンと併用していることもあってか、HDRそのものの機能を全て使いこなしているわけではありません。皆さんも、自分に合った使い方のできるモデルを探していけばOKだとおもいます。

次回はHDRを使った実際の録音方法や小技などを紹介してみようと思います。



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